第三話 細分化

昔に比べたらデイセーラーが少しは注目されるようになりました。そうしたら、デイセーラーにも細分化が起こります。デイセーラーが売れるとなったら、他の造船所もデイセーラーを造ろうと考えます。そして、どうせ作るなら、少しでも差別化を図ろうと考えます。そのひとつの流れは、もっとスピードを上げて、スポーツ性を高め、レーサーの如き性能を求めていきます。そしてもうひとつは優雅さと言いますか、スピードは今のままで十分と考え、美しさとか、容易さとかに進んで行きます。

しかし、全てに共通する事は、シングルハンドである事です。だから、ただのレーサーじゃ無いし、クラシックヨットでも無い。シングルで、容易に高い帆走性能をスポーツ的に楽しむ事ができるという暗黙のデイセーラーコンセプトは踏襲されています。

イタリアのDINAMICAはスピード志向で、オランダのEAGLEは優雅なセーリングを目指しています。
どっちが良いわけではありませんが、こういうバリエーションが増えてきているという処に、デイセーラーコンセプトの定着度の高さが伺えます。

デイセーラーはいずれも、キャビンはシンプルで、キャビンの居住性はあまり重視しません。だからこそ、低い重心が実現できますし、それはセーリング性能にも大きく寄与します。

これらのスタイルが広がるには理由があります。それは我々のライフスタイルの在り方にあると思います。ヨットと言えばレースか旅、或はキャビンライフであったのが、いわゆるスポーツとして捉えられるようになった事ではないかと思います。一日の中でのわずかな時間や、週末にセーリングそのものを楽しむという事が、これまではあったようで無かった事。そして、現代人はやっぱり忙しいという事でしょう。

旅は違う手段も考えられます。飛行機もあれば鉄道もあるし、車でも行けます。キャビンライフだって、ヨットである事が必ずしも必要ではありません。しかしながら、セーリングを考えますと、やっぱりこれはヨットでなければならない。そこがポイントではないかと思います。ならば、そのセーリングをどう味わうか? だからこそ、デイセーラーが注目されてきたのではないかと思います。

でも、まだ日本では割り切る事は簡単ではありません。それはまだ一定の時間の経過を待たなければならないと思います。しかし、日本の現状を見るに、クルージングに出かけないクルージング艇が多い中、これは時間の問題ではなかろうか? と密かに思っているわけであります。多くのクルージング艇が何をしているかと言えば、やっぱりデイセーリングだろうと思います。

デイセーリングという乗り方は、日本のライフスタイルに最も相応しいし、有効であると思っています。そのデイセーリングにクルージング艇を使うか、デイセーラーを使うか、或はハイパフォーマンスクルーザーを使うか? デイセーリングをどう考え、その他をどう考えるか次第ではないかと思います。そのその他というのは、セーリング以外ですから、旅やキャビンライフの事です。

デイセーラーが細分化されているとは言え、デイセーラーである事には違いありません。サイズのバリエーションはいろいろですが、キャビンはシンプルだし、シングルハンドを志向し、高い帆走性能をもたせます。しかし、姿は異なり、スピードは異なり、操作性も異なります。それはセーリングをスポーツ的に考えつつも異なる見方をしていると思います。そこに好みが分かれる処ではあります。でも、同じデイセーラーなのであります。セーリングを優雅なスポーツ的に捉えるやり方もあれば、ハードなスポーツとして捉えるやり方もあります。デイセーラーを選ぶかどうかという事もありますが、今ではどのデイセーラーを選ぶかという具合に進んで進んできました。この変化は大きいと思っています。日本はまだデイセーラーを選ぶかどうかですが、欧米では先に進んでいます。

次へ       目次へ