第二十二話 多様性

進歩が進みますと、多様性がでてきます。あの大量に生産される車だって、色は選べるし、エンジンを選んだり、シートやタイヤまで選べます。ひとりひとりの好みをいかに反映させようかという努力がなされます。オプションの選択幅はそう多くはありませんが、あの大量生産を考えますと、すごい事であります。それは多様性から来るものでしょう。昔はそんな事は無かった。選択の幅が広がった事は良い事だと思います。

多様性の元は民主主義とともに、個人主義が生まれ、発展してきた処にあるかと思います。昔の日本の有り様とは違います。みんな一緒で安心したのが、おれは違う物を好むという事になり、他人と同じでは嫌という感じ。でも、新しい物に対しては拒否反応があり、一部の新しい物好きの人が取り入れて、少し浸透していきますと同じ物を好み、安心を好みます。そして、それがさらに浸透していくにつれ、変化が現れる。違う物が好まれる。

とは言っても、ヨットに関しての浸透度はまだまだですから、多様性もまだまだかなと思います。もちろん、以前に比べたら進んではきました。でも、まだ同じを好み、安心を好み、同時に個性も混じってくる。そういう混在した感じがあります。この先、もっと進むと、もっと多様化してくるかと思います。

そして、それがさらに、どんどん過ぎていきますと、今度は同じである事が気にならなくなるかもしれません。同じか違うかを意識さえしなくなる。もっと合理的に考えて、これが良い。たまたま隣と同じだった。そういう風になるかもしれません。

日本ではワンデザインのレースがなかなか流行らない。同じヨットをみんなが持つのは嫌なのかな〜と思ったり。でも、合理的に考えれば、ワンデザインの効用は高いと思われます。そのヨットが古くなったとしても関係ない、性能は時とともに進歩していくものですが、それも関係無い。ルールが変わって、どのヨットを買えば良いのか、そういう事も関係無い。

経済的な事を考えるならば、ワンデザインのレースというのは非常に合理的であります。進んだ欧米では、もちろん流行っています。お金をどんどんつぎ込める方は別でしょうが、そうでも無い限り、ワンデザインというのは、非常に効率が良い。

デイセーラーはその分野でも使われています。もちろん、レース用として建造されたわけではありませんが、でも、同じヨットが集まれば、同じ条件でレースを楽しめる。ファーストホームが当然優勝ですし、着順がそのままの順位ですので、非常に解りやすい。それに、ヨットを買い換える必要もない。という事で、普段はデイセーリングを楽しみ、たまに、こういうレースを楽しむ方も多いようです。

さらに、これが進んで、特にヨーロッパでは、レーサーの性能を持つ様なデイセーラーが目白押し。彼らはやっぱり競争が好きなんですね。勝つ事が好きなんでしょう。ここに使われるデイセーラーだって、普段はデイセーリングです。性能を高めた分、レーサーのように軽い。もちろん、キャビンはもっとシンプル化しています。

欧米のヨットに対する多様化は日本人の比では無いと思いますが、一方では、こういうワンデザインも楽しんでいます。これはいわゆる欧米人の合理的考え方の現れかもしれません。日本でも、個性を重んじつつ、一方では、こういうワンデザインも増えると面白くなるのではなかろうかと思います。個性だ、多様性だと言ってるうちは、そんなものは無いからであり、そんな事が気にならなくなった時は、まさしく個性や多様性が当たり前になった時ではないかと思います。

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