第六十四話 量産では難しい

量産するには、それなりのやり方があります。今日のデイセーラーを建造するのは、みんな小規模の造船所です。量産の造船所が手を出さないのは、マーケットが小さいからという見方もあるかもしれません。しかし、本当の処は、量産では造れないからです。

船型、見た目はどうにでもなります。デザインさえ起こせば、それなりのものはできる。しかし、重量を軽くしつつ、高い剛性を得るには、それなりの手間がかかります。それは使う材料の質だけの問題ではありません。そして、それなりのセールフィーリングを得るには、船体の重量と硬さが必要です。もちろん、全体のバランスも必要ですが。

質をどこまで求めるか?それはヨット本体の質が、そのままセールフィーリングにつながる。グッドフィーリングを得るには、硬い船体が必要です。その硬い船体をいかに軽く作れるか?軽く作れれば、バラストを重くして、復元性を高める事もできます。

数週間で造るのと、数ヶ月かけるのとでは全然違います。今時、小規模生産でも、木材はコンピュータでカットするし、最新技術で建造しています。材質はもちろん違うが、それ以上に、構造的な違いや工法の違いがその差を生み出すと思います。だから違う物ができる。

本格外洋艇は小規模造船所からしか生まれません。本格レーサーは小規模造船所からしか生まれません。本格デイセーラーも同様に小規模造船所からしか生まれないのです。



今日の一曲 フィービースノー Don't Le Me Down

次へ        目次へ