第五十五話 ヨットの見方

そのヨットはどんなヨットなのかと思う時、インターネットや雑誌の取材記事なんかを読んだりします。そこには、プロが取材した記事があります。その評価はいかに? と読むわけですが、その記事内容は的を得ているのか? そういう疑問が湧いて来る事もあります。そういうヨットなのかな〜?と思う事もあります。そういう場合は大抵は内容が主観的な部分が多い場合です。

人が言う事ですから、主観的にならざるを得ないわけですが、しかし、あまりにも主観が多いと、その視点が造船所のコンセプトと合致していれば良いのでしょうが、少しずれていたりしますと、それは違うでしょう、と言いたくなる事もあります。

人の意見は千差万別、いろんな見方があって当然ですし、それはその方の過去の経験から来るわけですから、違う経験を持つ人は、違う意見を持って当然という事になります。しかし、プロの評論家として、公の記事になる時、個人が自分の意見を言うのとは違う重みがありますね。

私も一応は長い間業界におりますので、それなりの見方ができてきます。できるだけ公平に見るようにはしますが、それでも、注意しないと、個人の好みが出てきたりします。クルージング艇と言いましても、その受け取るイメージは千差万別です。

そのヨットはどんなヨットなのか? 造船所はどんなオーナーを想定しているのか?それさえ明らかににすれば、概略はもう掴めます。構造や工法、それにデッキアレンジメント等々はそれに従うものかと思います。

そのうえで、できるだけ数値データを出して、その評価を行う。それは同じコンセプトの他のヨットと比べて、どうなのか?その評価がプロとしての見方を期待したいわけです。もちろん、試乗も含めてです。でも、それでも、あらゆる状況での試乗はできないわけです。

良く、広いとか大きいとか表現しますが、特に最近のヨットはフリーボードが高い。ならば、実際測って数値を上げた方が良いんじゃないかと思いますね。そして、それがどういう影響を及ぼすのか?

造船所の意図するコンセプトにおいて、そのヨットは実際はどうなのか?そのヨットのメリットはどこか、デメリットはどこか、それがコンセプトに影響するのか?できるだけ多くの客観的データと、そのうえでのそのヨットのコンセプトの位置づけを明確にしていく。そして、観る側は客観的なデータに基づくものと、主観的な意見とを冷静に見る方が良いのかなと思います。

これまでたくさんのSADR値を計算してきましたが、これは評価の基準としてとても良い方法だと思います。これは重量に対するセールエリアですから、セーリングを重視するヨット以外はあまり重要では無いと思えるかもしれませんが、でも、この数値によって、どれだけセーリングを重要視しているかが解ります。それによって、カテゴリーの分類をしていけば、そのヨットのコンセプトも解ってきます。そして、水線長、幅、吃水、バラスト、エンジンパワー、清水と燃料の容量等で、慣れていきますと、だいたい解ってくると思います。これらは仕様書で解る事ばかりですね。

仕様書のデータを吟味して、そのうえで、年間建造艇数を見れば、だいたい解ると思いますね。
ところで、次の写真をご覧ください。

       

この二つのヨットは全長としては同じサイズです。でも、全然違うヨットです。さて、このふたつのヨットをどう見るか? どっちが良いという問題では無く、コンセプトが全く違うわけです。いろんな見方があると思います。乗り方が違えば、ヨットも違って当たり前。違わないといけません。

評価の仕方はふたつ。ひとつは、コンセプト違いを明らかにする事。それと、同じコンセプト内にある、他のたくさんのヨットの中においてどういう位置になるかを明らかにする事。このふたつかなと思います。良いも悪いも見方次第、使われ方次第。みんな良いヨットなんです。

今日の一曲 サラヴォーン Misty

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