第五十四話 デイセーラーの概念

量から質へという言葉がありますが、サイズから質へと言い換えたいと思います。かつては、ヨットのサイズが物を言う時代でした。いつかは30フィートとか、買い替えの度にサイズが大きくなるのが常識でも有りました。30フィートより35、40と大きくなりました。大きい事は良い事だという考え方です。

しかし、それが、大きければ何でも良いという事から変化してきます。私は、デイセーラーはセーリングそのものに対しての質を問うたのではないかと思っています。シングルが簡単だとか、そういう事は二次的な事で、セーリングそのものの質をどう上げていくか、それはこれまであったようで、実際は無かったのではないかと思います。

より速くとか、より頑丈にとかはありました。しかし、曖昧なテーマではありますが、セーリングをして、そのフィーリングはどうなのかという事をテーマにしたのが、デイセーラーだと感じています。そこから始まって、今では、その範囲をぐっと広げて、クルージングやレーサーにまで及んでいます。もはや、デイセーリングという言葉から来るイメージでは表しきれない現実があります。

しかし、それでも、セーリングという質をテーマにしているかと思います。普通は、このヨットなら、これができます、あれができますという事になるのですが、その前に、セーリングそのものの質をいかに高めるか? それは恐らく、欧米のヨット文化の成熟度の高さと言いますか、浸透度と言いますか、決して一般的な欲求では無いかもしれませんが、そういう事が広がる土壌が出来てきたのだろうと思います。

セールさえあれば、どんなヨットでもセーリングが出来るのがヨットです。でも、みんな同じではありません。それはスピードとか、頑丈さとか、一部の要素では無く、あらゆる要素が総合してできるトータルのフィーリングです。ですから、セーリングはフィーリングだと思うわけです。それを何とかしようとしているのがデイセーラーではないかと思う次第です。

とっても難しい事ではあるのですが、デイセーラーは単純なピクニックボートではありません。もちろん、ピクニックしようが、デートセーリングしようが勝手ではありますが、ピクニック程度なら、どんなヨットでも構わ無いと思います。でも、そのピクニックセーリングでさえも、滑らかなセーリングを味わえるなら、その方が気持ちが良いのではないでしょうか? 

ですから、クルージング艇はキャビンの快適さを求め、レーサーはスピード又は勝つ事を求め、デイセーラーはセーリングを求めたと思います。

アメリカのヨット雑誌に、アレリオン33Sの取材記事が出ていましたが、最後の締めくくりの文として、ウィークエンドのクルージングにも行けるし、ピクニックも出来る。しかし、それがこのヨットのポイントでは無い。このヨットはセーリングを目指していると書かれていました。

今日の一曲  日野 テルマサ Stardust

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