第三話 デザイン

クラシック系とモダン系のデザインがあります。最近の量産艇は、キャビン拡大競争が一段落したのか、結構かっこいいデザインになってきたな〜と思います。しかし、それでも、寿命は短い。寿命というのは、デザインの寿命です。もう何年かしますと、また新しいデザインが出ます。別に、気にしなければ何でも無いんですが、何となく古く見えてしまう。

一方、クラシック系は、こういうデザイン変化が殆どありません。造船所は時代を超えた美しさとか言いますが、確かに、昔のデザインと今造られている新艇のデザインがそうは変わらない。このクラシック系とは言っても、帆走性能は最新というのがあります。これが最近のトレンドではないかと思います。

でっかいヨット、50フィートでも60フィートでも、或いはメガヨットと言われるカスタムで造られるヨットでも、水線から上の船体はクラシックですが、水船から下のデザインはモダン。それに、マストや艤装セールプランも最新、そういうヨットが結構多くなってきました。

こういうクラシック系というのは、多分、将来の買い替え需要は少ない。長く乗り続ける。従って、量産系の造船所向きではありませんので、小規模造船所から出てきます。小規模造船所では、量産系のヨットと差別化を図らなければなりません。見た目がクラシックなだけでは不十分。年間に建造する数も少ない。よって、より手間をかけて造る。従って、構造的に強いヨットが出来上がる。でも、欠点はその分価格が高くなる。でも、品質は良いと思います。

モダンかクラシックかは、個人の好みですから、何とも言えませんが、それぞれに美しさがありますね。この美しさは個人の趣味として遊ぶには、かなり重要な要素ではないかと思います。車だって、デザインによっては売れ行きが全然違うという話も聞いた事があります。そのヨットのコンセプト、人間が使うわけですから、その使い勝手の良さ、ヨットとしての性能、そういう事も含みながら、且つ、かっこいいデザインが求められる。

量産艇のキャビン競争が一段落したのは、良い事かもしれません。これから、続々と、かっこいいデザインのヨットが出てくるんじゃないか? 天井だってそんなに高くしなくても良いか、と思うようになるかもしれません。そうしたら、もっとかっこいいデザインができる。でも、最近のはなかなか良くなったな〜と思います。でも、あるヨット、水線あたりにチャインが出来た。チャインは船底部と、ハルの立ち上がり部の境界です。ここに少し出っ張りができた。元々、昔ですが鉄で造っていた頃、
その繋ぎ目になった箇所。チャインを設けて作り易いから。でも、このチャインは、ヒールした時に、直真性を良くするかもしれません? でも、そこには、わずかではあっても、収納スペースが広くなったと書かれていました。

デザインは難しい。見た目だけでは収まらない。何かを得たら、何かを犠牲にする。そこの妥協ポイントをどうするか? プロデザイナーの腕の見せ所。クラシック系だって、みんな同じじゃありません。これだって、いろいろな見せ方があります。

クラシック系の対極にあるのが、イタリアンデザインのような気がします。超モダン。でも、このイタリアンデザインも時代を超えるようなものがあるような気がします。イタリア人はイタリアントラディッションとか言ったりもします。つまり、モダンであっても、奇抜では無くて、美しいヨットがあります。
多分、細かい部分の細工というより、全体のプロポーションにあるのかもしれません。我々人間が共通して感じる、モダンだろうがクラシックだろうが、共通の美しさという物があるのかもしれません。それが何かは解りませんが。だから難しいのかな?

今日の一曲 ジョンコルトレーン(テナーサックス) & ジョニーハートマン(ボーカル)
My One and Only Love

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