第二十一話 理屈

理屈は英語で言えば文法のようなものでしょうか。英語を勉強するのは、実践でと言いますが、子供なら、使っていくうちに覚えてしまいますが、大人になりますと、なかなかそうはいきません。なかなか覚えられない。それで文法も一緒に学んだ方が、大人には良いかなと思います。

それと同じで、ヨットも艤装品の役目も、理屈をきちんと理解する方が、実践で役に立つ。大人は理屈で考えますから、何かあったら、理屈の知識で、いろんな事が考えられます。子供だったら、いろいろ試して、その中から正解を感じ取っていくのかもしれませんが、大人は、まずは理屈を覚えておいた方が良いかもしれません。

以前ですが、ジブファーラーのセールを下ろすという時、下ろした事が無いのでどうやって下ろせば良いか解らないという方がおられました。また、ブームバングはどうやって使うのか?そういう事も聞かれた事があります。実際、これまでセーリングは経験してきたものの、各部が何の為にあるのか、今一理解されていなかった。

そこで、自分のヨットにある装備、これらを全部、どこにあって、どういう理屈で、どういう役目をしているのか、それを知る事は重要であると思います。幸い、ヨットは目で追っていけば、どこを通って、どこに繋がっているかという事が解ります。そこで、ひとつひとつ紐解いていきますと、ヨット全体の理解も深まります。今後のヨットライフにおいて、いろんな事がありますから、その対応は、知っているか知らないかで随分違うはずです。知っていれば、理屈さえ解れば、こうじゃないか、こうしたら? とか、そういうアイデアが出てくるはずです。また、知っている事で、トラブルを未然に防ぐという事もあるかと思います。

ジブハリ、メインハリ、スピンハリ、これらがどこを通って、どこに繋がっているか。リーフロープ、カニンガムがどこに繋がって、引けば、どういう作用になるか。その意味は何か?ステアリングホィールにしても、ちょっとデッキ下を覗いて、どういう構造になっているか? 細かい技術的な部分は別にしても、動かせば、こういう具合に動いて云々と、見れば大抵の事は解ります。

何度も書きましたが、メインシートはどういう具合に作用するか? ブームバングとの関係はどうなっているか? じっくり観察してみます。すると、ブームがどう動くのかが理屈として解ります。すると、セールがどう変わるかも解ってくる。

これらが解ると、実際のセーリングで、セールを例えば、リーチを開きたい、閉じたい、ここにも理屈がありますが、それをどうしたらできるかが解ります。そして、そのうえで、実際のセーリングにおいては、どういう時に、どういう操作を、どの程度やれば良いか? それが難しいところですが、そこが面白さで、探っていく事になります。新しい場面に遭遇した時も、理屈で考えて、こうしたらと思い、操作を考え、実践してみる。その結果を観察する。そういう事の繰り返しで、慣れて行けば、理屈を考える必要も無くなります。

そうなると、感覚的操作ができるようになって、より一層の観察力が身について、より感知能力も高まり、より微妙な変化も解るようになるかと思います。後は、経験を積む事で、より上手くなるという理屈です。

セーリングはいろんな状況があって、それに臨機応変にどれだけ対応ができるかという事になります。実際の調整が上手いかどうかという事もあるでしょうが、理屈を知って、対応の仕方も知る事が面白さになり、さらにどの程度の調整量かを求めていきます。つまり、解るという事がまず大事で、それが面白さを生み出すと思います。

セーリングは感覚遊びだと思いますので、最初は理屈から入って、徐々に慣れて、感覚操作になっていけば、より面白さは膨らむ。

セーリングだけでは無く、船内のポンプ類、エンジン、そういう物も大雑把な概略だけは知っておいた方が良い。電気関係は、見て解るものではありませんので、これはちょっと難しいですが。それと、例えば、エンジンですが、何か異変がある時、原因は何かと考えますが、一般的にそれほどエンジンに精通しているわけではありません。しかし、それでも、できる事もあります。例えば、その異変は、アイドリング状態でもそうか、高回転にしたら、ギヤを入れてそうなるか、等々、それでもって、原因を絞り込む事ができます。エンジンに限らず、具体的、どういう状態でそうなるか?

時々質問される事がありますが、症状だけを言われても、答えようが無い事もあります。ベテランのヨットマンは、過去にたくさんの経験積んでいますから、その経験からいろんな事を学び知っています。できれば、そのベテランの域に早く達する為にも、理屈ちゃんと把握しておくと良いと思います。

英語の文法を知っていれば、考えながらでもしゃべる事ができる。後は実践による慣れですね。それと同じかな?慣れれば、文法を考える事無くしゃべる事ができる。でも、聞く時は相手のペースですから難しい。これも慣れですね。セーリングで風がどう変わるかは相手のペースですから、より感知能力が問われる。同じ事じゃないかな〜? 子供は実践から学び、大人は理屈で学ぶ。子供のやり方は大人には難しいかな?

今日の一曲 チャーリー パーカー Just Friends

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