第十九話 ニス塗装

チークにニス塗装をしますと、非常にきれいです。塗装は常に下地が大事で、それがちゃんとしていないと、きれには仕上がらない。下地をきちんと作ってというのは、チークをサンディングして磨いて、下地剤を塗装して、乾かせて、通常は二液性のクリアーを塗装します。塗装しては乾燥させて、サンディングして、また塗装してと繰り返しです。時間と根気の要る仕事です。

ニス塗装は非常にきれいではあるのですが、外装は紫外線に影響されます。
数年経ちますと、部分的に剥がれてきます。それで、そうなりますと、一旦は全部剥がして、また塗装という事になり、大変な仕事になりますから、できれば、そういう部分が出ないうちに、軽くサンディングして2,3回塗装をしておくと、ずっときれいに保てます。しかし、まあ、人情と言いますか、きれいなうちに再塗装というのは、なかなかしないですね。それとそのままにしておきますと、汚くなるし、再塗装は大変になります。

いくらきれいでも、どこもかしこもニス塗装をしますと、ちょっとね〜という感じになりますが、適度にあしらうととってもきれいです。トウレール、ハンドレール、ティラーとかですね。木部というのは、きれいにしておけば、古くなっても美しさを感じますが、例え船齢が新しくても、木部が汚れると、かなり悪く見えてしまいます。ですから、クラシック系のデザインに多い、たくさんのチーク、チークデッキ等がありますと、手入れは非常に大変になります。

小規模の造船所に行きましたら、職人さんが、手作業でニス塗装をやっています。建造中ですから、チークの設置前の段階なら、作業としてはやり易い。でも、結構大変です。一方、ある大手の造船所では、片方から機械に通して、反対から出てきたら、もう出来上がりというのもありましたね。これには驚きでした。

チークには一切の塗装はしないという方もおられます。チーク本来のフィーリングが好きだという方ですね。それも一理あり。でも、手入れは大変です。磨き方にも注意が必要です。チーク表面をできるだけ荒らさないようにしなければなりません。表面がきれいだと、荒れていないと、案外汚れにくくなります。

チークデッキは長い間に、削られて磨かれていきます。荒らさないと言っても全く汚れないわけではありません。ですから、チークの厚みがある程度は必要です。長い期間に使えるようにです。だいたい10mm前後というところでしょうか。でも、一部のヨットでは、表面の1mm、2mmだけがチークで、その下は合板というのもあります。こういうのは、サンディングして表面をきれいにする余裕があまり無いので、張替えなければなりません。張り替えるのは大変な作業になります。何しろ、古いのをきれいに剥がす作業からしなければなりませんし。
カスタム建造されたトリンテラというヨットですが、チークの厚みが、12〜14mmぐらいありました。
これなどを見ても、そのヨットの寿命が長く考えられている事が解ります。

外装に比べて、内装のチークは紫外線の影響を受けませんから、ニス塗装が長持ちします。紫外線より、触って擦れによるニス剥がれの方です。という事は、外装にしても紫外線を避けるカバーをしておけば長持ちですが、でも、せいぜいコクピットぐらいでしょうか。フルカバーにしますと、カバーをはずしたり、つけたりの作業が大変です。せいぜいオフシーズンぐらいにカバーするぐらいでしょうね。それにしても、紫外線の影響は大きいです。

ついでながら、通常ハル表面に使われるゲルコートは硬い塗料ですが、紫外線にはあまり強くないので、濃い色はすぐに色褪せてきます。白はそれが目立たない。もちろん、ゲルコートの良いのになりますと、長もちではあります。最近では、ゲルコートに変わって、色を白以外にする場合は、オールグリップ塗装をする事が多くなりました。これは紫外線に強い塗料です。輝きが持続します。
ただ、このオールグリップは乾きが遅い。乾きが遅い事で、表面の凸凹が無くなります。よって汚れにくくなる。でも、乾燥時間が長いので、その間にゴミなんかが付着しないようにしないといけません。塗装は大変な作業です。でも、いくら古いヨットでも、再塗装をすれば、新品のようにピカピカになります。

30年たったヨットでも、ハルとデッキを塗装して、チークもニス塗装して、マストも塗装して、シート類を全部新しくして、ステイ類も交換。とってもきれいになりますね。クラシック系のヨットは、形的に時代の流行に左右されないので、こういう事でいくらでも復活させる事ができます。

今日の一曲 エリック クラプトン Autumn Leaves

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