第十六話 演出力

世間は音楽で溢れています。レストランに行っても、どこかのお店に入ってもBGMが流れていますし、テレビのコマーシャル、ドラマは当然、映画も音楽を効果的に使っています。その効果はと言いますと、逆に、その音楽が無かったとしたら、と考えますと、その音楽の力は大きいと思いますね。

例え、特に音楽好きで無くても、その影響は受けています。音楽はその状況を引き立てたり、場を和ませたりします。時に、煩いな〜と思う事もありますが。

その音楽をセーリング中、クルージング中にBGMとして流しても効果的かもしれません。自然の中に入って、何も音楽流さなくてもと思う方には不要ですが、でも、特にその曲を聴こうとしなくても、BGMとして流しておいても良いのではないかと思います。

世の中は人工的に作られています。元々自然にあった物ではなく、その上に人工的に構築された社会です。我々はそこから抜け出す事はできません。例え、ヨットを出して、エンジンをきってセーリングしていると言っても、人工的に造られたヨットで、誰かが考えたセーリングという遊びをしています。

どんな風に場を創っていけば良いか? 要はそれが大事なのかもしれません。セールを上げる。エンジンをカットする。そうやってセーリングの場を創ります。風や波の音を聴いても良いですが、時に、音楽を流してやるというのも悪くないかと思います。

CDを一枚かけますと、約1時間ぐらいでしょうか? 気分に応じて、その日の一枚を選択しても良いんじゃないでしょうか?今時は、CDを使わずに、ハードディスク内蔵とか、iPodとかもあります。
音楽はその場の空気を演出します。

楽しむというのは、何をどうするという事が大事ではあるのですが、それをどのように演出するかという事も大きく影響すると思います。ただ、ヨットを出してセーリングしてくるわけですが、自然は風が強いとか弱いとかですが、その他は人工的で、ひとりなのか、誰かと一緒なのか、どのようにセーリングするのかと人工的です。我々の楽しさは、人工的に作られる。ならば、どう演出するかにかかっているのではないかと思います。客観的事実は、面白いとか面白くないとかは無く、どう考えるか感じるかによって変わります。

つまり、外部から入ってくる情報を、どう考え、感じるか? 客観的事実はどうであれ、どう思うかにかかっています。ならば、それは演出力に寄る処も大きいかと思います。そのひとつの手段として、音楽を使う。

頭脳は事実がどうであれ、入ってきた情報をどう処理するかで決まります。だから、ゲームなんか、バーチャルな世界に遊ぶ事ができる。客観的事実として見るなら、ゲームなんかはつまらない。でも、頭脳はそれをリアルな世界とまでは言わないまでも、ある程度の場面として錯覚しますから、そこで遊ぶ事ができる。我々は頭の中で遊んでいるのかもしれません。

人工的な社会は造られた社会ですから、コントロールする事は可能です。逆にコントロールできないからイラついたりするわけですが、自然なものは、人工的では無いので、コントロールできなくても当然と思っていますから、仕方ないと思います。完全に自然の中に入れば、ストレスは無くなるのかもしれませんが、それは無理な話。ならば、演出力にかかっている。

ひとりで出るか、誰を誘うか? その時のセーリングにどれだけ対応できるか? 演出力に伴って、それを可能にする知識や腕もありますので、それを磨く事も必要でしょうし、加えて、音楽を流すという事もあると思います。人工的なものから逃げられないなら、いっその事、逆に人工を演出して、面白さ、楽しさを演出しようというわけです。お芝居みたいなもんかもしれません。自分で自分を楽しませる演出です。

こう考えますと、楽しさとか面白さには何も実体というものが無い。何を企画し、どう演出するかによって決まります。ならば、そう思って、セーリングを企画し、演出に工夫をして、お芝居を楽しんだら良いかと思います。そのひとつの方法として音楽を流す。

演出が上手いかどうか? それが重要です。 セーリングを楽しみたい。それが企画です。その企画をより面白くする為に、メインテナンスという演出をし、誰かを誘い、その日の風の状況に対応できる腕を持ち、お弁当を用意したり、音楽を流したりして演出します。例え、強風で出せなかったとしても、その時はその時なりの演出をする。そう思えば、どういう風に演出しようかと考える事になります。つまり、その企画から演出、そして実際のセーリングでのフィーリング、全てを遊ぶ事になりますね。今回失敗しても、また、次の機会にはどう演出したら良いのかと考えます。それも遊び。

世界は演出が上手いかどうかにかかっているのかもしれません。セーリングするという目的があって、そこにどうアプローチしていくか?どんなヨットを選ぶかからもう始まっています。夢があって、そこにどうアプローチするか?そこが面白さなのではないかと思います。ですから、セーリングするという目的と、そこへのアプローチを別々に考えた方が良いのではないでしょうか?風だけが頼りというのは、そうそう面白さのチャンスは無いかもしれません。演出力こそが鍵かもしれません。
そして、本番のセーリングになったら、その瞬間瞬間の味わいを大切にする。

今日の一曲 マイルス デイビス Milestones

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