第一話 何故に?

ヨット市場の低迷が続いています。世の中不況ですから仕方ないとも言えますが、そればかりでは無いのではないかと思います。他にも、広がらない原因はあるのではないか?マリーナには動かないヨットが多い。せっかく手に入れた夢のヨットが、置き去りです。何故に?

世代交代の問題、若者気質、等々もあるかもしれませんが、我々使う側に問題は無かったのか?と思わざるを得ません。昔は、結構レースを楽しむ人達が多かったような気がします。ヨットが少なかったせいもあるかもしれませんが、ヨットに乗りたいという人達もたくさん居て、今程、クルー不足に困る事は無かった。

そこにはオーナーが居て、クルーが居る。クルーはオーナーより先にきて出航の準備を整え、コーヒーまで準備してある事もある。この時は、クルーはヨットに乗せてもらうという立場です。そこにオーナーが悠然と現れ、まずは熱いコーヒーを一杯。それから出航です。レースと言っても、今のレーサーのような性能は無いわけで、それでも、みんな一緒ですからいいわけです。兎に角、ヨットに乗りたいという人が多かった。

それが徐々にクルーが居なくなり、今度はオーナーがクルーを求める風に変わってきます。そんなところから、レースもそうそうできなくなったり。同時に、ヨットがどんどん開発されて、性能が上がっていきますから、その分経費もかかるようになる。クルーの飯代なんかでも全部面倒みないといけなくなったり、立場が変わってきます。

なかにはレースをやめる人達でも出てきます。そこで、今度はクルージング艇になる。そのクルージング艇もどんどん開発されて、より大きなキャビン拡大競争となっていき、それに伴って、コクピットドジャーが常識のようになり、ビミニトップが設置され、オートパイロットが付き、よりクルージング色が濃くなっていく。エアコン装備なんかもちらほら出てきます。こうなりますと、新規参入者も、クルージング艇という事になります。

という事で、ヨットはセーリングを楽しむというより、船遊びという感じになり、動く別荘だという感じも強くなる。それは欧米がそういう方向に向かった事に寄るわけですが、欧米と違う所は、欧米人は本当に別荘のようにヨットに寝泊りする。一方、日本はそれが殆ど無い。ここのところで、使い方が別れてしまった。もし、日本人も欧米人のような使い方をしてきたなら、ヨット市場はこんなに低迷する事は無かったのではないかと思います。しかし、そうはならなかった。

かといって、クルージング艇で、あっちこっちクルージングして回るかと言いますと、そこは忙しい日本人ですから、そうそう暇は無い。それで日常的に何をするかと言いますと、ピクニック的なセーリングという事になります。ピクニックは天候さえ良ければ気持ちが良いものです。しかし、しょっちゅうする気にはなれないだろうし、しょっちゅうしたら、天候が悪い時に遭遇もするでしょうし、それじゃあ、ピクニックとして楽しくありません。結局、たまにという事になりかねません。

結局、ヨットの何が面白いんだ? という事になるのではないかと思います。最初は良い。物珍しさもある。でも、ワンシーズンを過ぎてしまえば、もうそんな事では維持できない。そこで、目覚めて、日本人も、週末ぐらいは欧米人のように別荘的に使うようになれば良かったのですが、そうはなってこなかった。今も相変わらず、ヨットに泊まる人は少ない。それはマリーナ設備の環境のせいという事もあると思いますが、でも、それでも、少ないと思います。

欧米のマリーナに行きますと、兎に角人が多い。決してヨットを出してという事では無く、コクピットでビール飲んでたり、キャビンで寛いでいたり、読書してたり、うろうろしている連中も多い。桟橋を歩いているだけで、しょっちゅう声をかけられ、ちょっと会話を交わすと、ビール飲むか?とか聞かれたり?根本的にヨットに対する姿勢が違うような気がします。

別荘として使わない日本人がクルージングヨットを持つ。忙しい日本人がクルージング艇を持つ。
欧米の流れとしては仕方なかったのかもしれませんが、ちょっと考え方を変えた方が良いのではないかと思います。もちろん、今後、日本人のライフスタイルが変われば、使い方も変わるかもしれません。でも、今は、そして当分はこのままでしょう。その結果、動かないヨットが増え、しかも、使われずに係留されるだけのヨットが増え、挙句の果ては、ヨットの数自体が減少してくる。市場の縮小ですね。減少傾向は不況のせいばかりでは無いと思います。

そこで提案は、ご存知の通り、デイセーリングとローカルレースです。デイセーリングはピクニックセーリングばかりとは限りません。真剣に走らせる、走りを楽しむ、操作をして反応を楽しむセーリングです。それと、好きな方はローカルのレースにもたまにでても良い。このあたりが中心になってきたらどうかと思います。もちろん、今持っているクルージング艇で良い。気持ちをシフトして、セーリングに向かう気持ちが高まれば、そのクルージング艇を使って、セーリングを楽しむ事ができます。セーリングそのものに面白さを得る。

すると、きっとたまのピクニックがより楽しくなるだろうと思います。時に、ヨットで宴会して、泊まるという事も増えるかもしれません。つまり、どんな使い方でも良いのですが、その中心になる使い方に面白さがあった方が良いと思います。しょっちゅうやっても面白い、楽しめる、もっとと思える使い方。

クルーの立場からしても、ただ毎回のんびりしてピクニックというのも、あまり魅力的では無いような気がします。例えレースで無くとも、集中して走るセーリングには、時に、スリルがあり、魅力があり、興奮したり、感動したり、いろいろな感情の動きがあります。それが面白さなのではないか?まじめにセーリングしますと、セーリングに対する疑問も出てくる。それがヨット談義になります。

そうなってくると、クルージング的装備の仕方ばかりに意識が向かうのでは無く、セーリングにも向かっていく事になります。今あるクルージング艇でも、そういう方向に向かえば、デイセーリングを楽しむ事はできる。ですから、もっとセーリングの方向へ向かった方が、日本人のライフスタイルとしては合うのではないかと思っています。

田舎は別としても、都会ではマリーナに行くのに長い時間がかかる。2時間かかって、マリーナに行ったら、やっぱり、1日中遊んでと考えるかもしれません。でも、そうなら、泊まればいいのですが、そうもいかない。それで、ぐったりして、渋滞の中を帰る事になりかねない。ならば、2時間かかってマリーナに行ったとしても、2〜3時間の集中セーリングでも良いんじゃないかと思います。むしろ、のんびり長い時間よりもいいのでは無いかとさえ思います。のんびりは、戻って、コクピットでやってもい良いのではないかと思います。この2〜3時間の集中セーリングが際立ってくる。時間の長さの問題では無いと思うのですが?

宴会しても、ピクニックしても、何でもして良いんですが、その中心に、デイセーリングを据えるというのは、一考の価値があると思うのですが?

レースは、レーサーとクルージング艇では話になりません。いくらレーティングがあろうと勝てません。でも、同じようなクルージング艇同士ならレースは成立しますから、面白くなります。それで、クルージング艇のレースというものが、たくさん企画されると良いなと思います。さらに、クルージング艇でセーリングする人達が増えれば、自分達で、2,3艇でも、4,5艇でも集めて自主レースという事もできるかもしれません。それには、各オーナーがセーリングを楽しむようになって、ヨット談義が、あっちこっちで行われるようになれば、自然と発生してくるかもしれません。月に1回でも、2ヶ月に1回でも、そういうクルージング艇参加型レースがあると、これもまた面白くなるのではないでしょうか?

まずは、より多くの方々にデイセーリングを遊んで頂きたい。真剣セーリング、集中セーリングを意識して遊んで頂きたいと思います。そこから、新たな何かが生まれていくのではないかと思います。
そろそろ、使い方をシフトしても良い時期ではないかと感じています。

では、最後に今日の一曲。 石川さゆりの ウィスキーがお好きでしょ  
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