第九十七話 感情の老化

歳を取れば肉体は老化します。これは避けられない事実ですが、気がついてみると、感情も同じように老化現象が見られます。昔、子供の頃は何でも面白かったし、夢中に遊んだものですが、段々と夢中になれる物がひとつ、ふたつと消えて、ついには感動も滅多にはしなくなりました。人は映画や本を通じて感動する事があります。しかし、これは他人のドラマ、自分のドラマで感動できたらどんなに素晴らしいでしょうか。

それを夢と言いますが、遠い将来の夢、いつかできたらと思います。それはそれで多いに結構かと思います。しかし、ドラマは遠い先の事である必要は無いかもしれません。今できる事でドラマができたら、先の夢は夢として、今できるドラマを造ってはいかがでしょうか?

例えば、夢として日本一周したいと思う。その為今その人はヨットを自分で造っているとしたら、それは今のドラマかと思います。つまり、今のドラマは夢に向かって、今何ができるかにかかっていると思います。あんた達は夢を売る商売だと言われます。しかし、これには少しだけ違和感を感じます。その夢を売る為に、こんな事もあんな事もできるとか言いながら売ろうとしますが、残念ながら、多くのケースでそのできる事をしていない。楽しんではおられない。それで果たして夢を売っているのか?夢ばかり描かせて、その時だけ楽しませているだけかもしれません。こういう事も将来はできますが、今はこういう楽しみ方もできます。今も含まないといけないような気がしますね。家族みんなで泊まって、別荘がわりにもなりますと言いながら、そういう使い方しない事が解っていたりします。売れれば良いわけです。それでも夢を売ってると言えるでしょうか?夢への道中も必要かと思います。

夢を描きながら、今のドラマを作る。そのドラマに夢中になるなら、夢の達成率は非常に高くなる。或いは、今のドラマに夢中になって、描いた夢などどうでも良くなる事もあるかもしれません。つまり、夢を描く事は大事ですが、それ以上に大事なのは今のドラマではないかと思います。ですから、今のドラマをどう作り、夢中になれるか

夢が世界一周だろうが、日本一周だろうが、例え何であれ、今その為に何ができるか?今すぐに行ける人はそれで良い。しかし、今は仕事だとか、いろんな用事とか、いろんな事情があります。そこで、夢が何であれ、その基本になる物がデイセーリングだと思います。

体と感覚と頭脳がヨットに馴染み、海に馴染み、気象に馴染みます。その延長に全てがあると思います。デイセーリングは夢では無いかもしれませんが、今のドラマを作る最高の手段かと思います。湾内だからと言って馬鹿にしたもんじゃない。湾内でもいろんな事がある。

ある方が楽器を練習してあります。別に今からプロになろうという事ではありません。しかし、毎日、毎日練習して、落ち込んだり、少し進歩してご満悦だったりするわけです。将来、うまく弾けるようになったら良いと思いながら、今のドラマを楽しんでおられる。将来の為に今苦しいドラマを造ってはいけません。自分で今楽しめるドラマにしないといけません。

ある人が魚探を購入された。でも、仕事の関係上全く釣りにいけない。でも、竿と魚探を見て、いつかと思うだけでも楽しいもんだという話がありました。そんなもんかとも思いましたが、どうも可笑しい。船に乗って釣りにいけないなら、何故、近場に釣りに行かないのか?その方が楽しいと思うわけです。遠くのセーリングもあれば、近くのセーリングもあります。まあ、いろんな考え方もあると思いますが、こう思うわけです。ですから、今の自分のドラマを今楽しんで頂きたいと思います。

いつか、日本一周したいと思うなら、今デイセーリングして、今のドラマを楽しんで頂きたいと思うわけです。すると、きっと感情の老化はストップして、逆行するかもしれませんね。きっとすると思います。夢がシングルハンドのデイセーリングにおける自由自在なら、手段と目的が同じです。

みんながみんなデイセーリングとはいかないでしょう。もしそうなったら大変です。海は混雑しますから、あまり多くなっても困りますね。

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