第六十二話 セーリングは流行らない?

セーリング、セーリングと言っていると、今更セーリングは流行らないときた。セーリングはどうもハードなイメージがあるらしい。今更、この歳になってハードには乗りたくないそうだ。ならば、ゆったりでもセーリングをどうぞ宜しく。

セーリングと言ってもいろいろあります。すごい人は外洋を目指す。外洋では荒れ狂った海でもセーリングを余儀なくされる。そんなセーリングは、一部の強者にお任せします。繊細な調整を余儀なくされるレースもそういう方にお任せしましょう。

セーリングが流行らないといったって、たまにはするでしょう。天候が良い時、ほど良い風がある時、波が無い時、こんな日があったら、優雅なセーリングをしましょう。でも、そういう時こそ、ピシッとセールを決めて、美しく。古くなったシート類は似合いません。きれいなシートで、きれいなセール、
船体はピカピカに磨かれ、おしゃれに。夕方からのサンセットセーリングなんかは趣があります。
たまには、奥さんを誘って、ワインの1本もぶら下げて、ぶらりと出てみる。

ハッスルもしないが、セールを無視してもいけません。でも、こんな良い日には、ゆったりだけれども、セールは決まっている。ですから、ヨットも実にスムースに流れるように走ります。

好きな音楽でもかけて、ワインでも飲んで、そんな2時間ぐらいのセーリング。こんな優雅なセーリングが流行らない?

2時間から3時間というのは、ひとつの事を楽しむのには良い時間かもしれません。映画、野球、
サッカー、コンサート、気がついてみると一軒目の飲み屋、これらはだいたい2時間前後から3時間ぐらい。これ以上長くなると疲れてくる。

セーリングの時間を2時間前後として、それ前後の準備と後始末で30分ぐらい。一回のセーリングをこれぐらいの時間で済ます。わずかな時間ですから、気分はそこに集中します。そんなもんでも良いんじゃないかと思います。

彼女か奥さんと二人で乗るなら、馬鹿でかいヨットは無粋です。手頃な美しいヨットで、気軽に出すのが良い。さっとセール上げて、コース決めて、セールをピシッ決める。舵を上手にコントロールして滑らかに走る。そこでしゃれたジャズなんか流れて、次にワインが出る。いちいちワインを冷蔵庫から取り出すなんて事を奥さんにさせちゃいけません。アイスボックスをコクピットにおいて、そこでオープン。

夏でも夕方なら涼しい。ひとつのイベントは2時間〜3時間。これ以上長くなったら、いけません。これ以上長い時は、次のイベントが必要になります。奥さんがその気なら、ここらで、もっとセーリングに集中する。別に激しくでは無く、優雅さを保ちながら。

こんな優雅なセーリングは毎日やっちゃいけません。毎週でもいけません。できるだけ少なく、たまにある事でその価値観が出ます。しょっちゅうじゃ、誰でも飽きてきます。当たり前になってくる。
ですから、これはイベントです。奥さん孝行なのです。

次のセーリングでは、鋭く。セーリングに集中して、2時間のセーリングを極める。こんな時はシングルです。セールカーブを見ながら、頭も使いながら、快走を目指す。

仲間を招待した時は、これはまた別のイベントです。おしゃべりと食事、飲み会をセーリングしながら楽しみます。初めてきた人には舵を持たせる。ちょっとウィンチを回してもらう。それがエンターテインメントになります。

強風で出れない時は、ヨットの中を片付けよう。無駄な物は捨てて、できるだけこざっぱりした船内、クリーンな船内にしておきます。或いは、ウィンチをばらして、グリスアップしよう。エンジンを点検してみよう。シート類も点検してみましょう。点検したら、きれいに巻いて、束ねて整理。船体を洗っても良い。見るところはたくさんありますから、退屈はしないはず。これも2〜3時間。この時間でひとつの事が終わったら、帰るか、コーヒーでも入れて、のんびりマリーナを眺めるか、本でも読む。

たまに来て、何時間も何かをするより、1回の時間を2〜3時間として、できるだけ数多く関わる方が良いような。それが終わったら、次にまた別の何かをすれば良い。

そんな時間割りはデイセーリングにはピッタリです。わずか2〜3時間をは言っても、回数多ければ、塵も積もれば山となる。しかもいろんな状況下で乗りますから、経験は豊富になりますね。

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