第五十五話 とにかく楽しく

なんやかんや言いますが、要は簡単な事で、ヨットが楽しけりゃ良いという事です。どんな使い方だろうが、本人さえ面白ければ良い。それだけの事です。面白く無いと、面白く無いオーラがヨットから出てきて、それが伝染していき、マリーナ全体に広がっていく。それがいかんのです。この病気は気がつかないうちに、慢性化し、それも不思議に思わなくなってくる。そういう病気です。

そこで活発なヨットをひとつ作り、ふたつ作りしていきますと、そのヨットからは楽しいオーラが出てきます。そうしますとこれも伝染しますね。ところが、今は楽しくないオーラの方がパワーがあります。ですから、楽しいオーラ2に対して、楽しくないオーラ1ぐらいにならないと勝てない。

考えてもみてください。マリーナに行って、活気があって、賑やかで、老若男女がうじゃうじゃ居て、
みんなが楽しそうなスマイルで挨拶を交わし、そこに居るだけで楽しさが味わえるとしたら、みんなもっと行きます。そうなると、ほっといても良いわけです。そこに居るだけでも楽しいんですから。しょっちゅう行ってますと、自然に自分なりの使い方を造っていきます。それなら良いのです。ひとりでも多くの活動的ヨットを作る。マリーナのカフェも大流行、そしてそこではあっちこっちで、ヨット談義、世間話をしてますと、誰かが、今度レースでもやろうか、という話も出るかも?じゃあ、自分達でルールを話し合う。公式レースとは違うユニークなレースもできるかも?そうやって、どんどん活気が生まれる。

そんな中にたまたま参加した、否、載せてもらったゲストも、ヨットの面白さと言いますか、ヨット仲間の面白さに目覚めるかもしれません。大の大人が無邪気に語らう姿は、楽しい。もし、こうなったら、ほっといて良いわけです。ここに書く事も無くなってしまうかも?

ところが、残念な事に、今の状況はその反対側にあります。ですから、何とかせにゃいかん!ヨット界を変えないかんのです。それはマリーナの仕事であり、我々業者の仕事でもある。活気ついたら、マリーナも業者も儲かるし、おっと、お客様だって楽しいのですから、みんなが楽しくなる。そういうヨット界なら、奥さんも来ます。子供も来る。楽しけりゃ来るんです。

マリーナではしょっちゅう出す人も居る。メインテナンスに余念が無い人も居る。のんびりコクピットで昼寝をしている人も居る。酒盛りで盛り上がっているグループもある。実に、いろんな人達が、いろんなスタイルで遊んでいる。それで良い。そうなったら、デイセーリングとか、シングルとか、そんな事言いません。ほっといても、する人はするんですから。夜は夜で、たくさんの人達が帰らなくて、泊まります。そういう人達も一杯出てくるはずです。マリーナはもうひとつの社会を築きます。

情報交換もできます。どこどこ行った、どこにヨットを泊められる。どこどこは良かったなんかの情報です。そしたら、他の人達も行けますね。何艇もつらなって行こうか、という話も出るかもしれません。楽しいオーラは回りを、全体を幸せにする。もし、そうなったら、ヨットなんて何でも良い。一部の本気でセーリングする人か、外洋の旅に出る人以外は、何でも、好きなヨットで良い。ヨットだけが楽しいのでは無く、マリーナも含めて、ヨットライフそのものが楽しくなるからです。

ところが、実際そうやってヨットに多く接すると、ヨットの事が良く解ってきます。ですから、彼らは何でも良いという所から出て、これが良いと明確に解るようになる。そうすると個性的なヨットも多くなる。

これは理想のマリンライフです。理想は理想として、今はひとりでも多く、ヨットが面白いと思える人達を作る。今のところ、マリーナに来るだけでは不十分なので、ヨットをいかに演出するかを考えています。それで、知識とかゲームとかいろいろ言ってきました。これらは決して嘘ではありません。便宜上言ったわけでは無く、本気でそう思っています。昔からハードばかりを売ってきました。それはコンピューターを売って、ソフトが無い状態です。歴史の深い欧米ならそれでも良いのでしょうが、日本はこれからですから、どうやって遊ぶのが日本に適しているのか、そういう事も考えねば、楽しくないヨットばかりを増やすと、いずれは駄目になる。楽しいヨットが増えてほしいものです。

次へ      目次へ