第四十七話 上りコース

セールを目一杯引き込んで、上りでどの程度の風速まで走れるかはヨット次第です。クルー無しでの、クルーのハイクアウト無しが条件ですから、ヨットのスタビリティーとそれに対するセールプランによります。ヒール角度15度〜20度ぐらいで、舵は真っ直ぐからやや風下に向けたぐらい(軽いウェザーヘルム)、セールはメインは中央、ジェノアはサイドステーにくっつけたくらい、それに上部はややツウィストさせて、これがそのヨットの登れる限界の角度になると思います。それも風速が上がってくれば、このままとは行きませんので、どの程度の風速まで行けるか。

しばらく慣れるまではこの走りで、風向が変われば、それに合わせて舵を切りながら、常にリボンがきれいに流れるようにします。風を左から受けている場合、風が右に移動すれば舵も右に、風が左に振れれば、その分だけ左に修正、リボンは常にきれいにながれている状態をキープします。

さて、コース設定が無ければ、いつタックしても良いのですが、この際、最初にセールを上げて、その時の真正面の角度の先に目的地があると設定したとします。例えば、真北、0度から風が吹いてくるとします。セールを上げる為にヨットを向けた時の角度です。最初に角度をつけて上り始めます。45度ぐらいとしましょうか、見かけの風はもっと前側よりになります。これで走って、途中から風が0度から355度にシフトしたとします。すると、ヨットは5度高く、つまり40度で走れます。という事は目標地に対し角度が良くなった事になります。逆に、風が5度にシフトしたとすれば、このまま走れば45度から50度に落とさなくてはいけません。これは角度が悪くなった事を意味しますから、ここでタックします。すると反対側では320度で走れる事になりますから、5度分高さを稼いだ事になります。目標値方向0度ですから、右に走ると50度、左に走ると320度です。そのまま風向が同じか、もっと右に、10度、15度とシフトしていくようなら、325度、330度と角度は良くなります。逆にシフトしても、0度まではそのまま、0度を越して355度とかになっていきますと、再びタックして角度の良い方を走る。つまりは風向を常に意識しています。リボンをきれいに流しながら、且つ、風向も意識しています。真北から風が吹くと0度ですから、計算はしやすいのですが、これが330度から風が吹くとしますと、計算は少しややこしくなります。でも、理屈は同じですから、慣れてしまう必要があります。

ジョギングセーリングでは、こういうタックはしなくても良いのですが、障害物があるからタックするとか何と無くでも良いですが、リボンを目安に走るのに慣れたら、こういうタックもやって良いと思います。ちなみに、レースでは角度が有利になるからと言って、シフトしっぱなしの方向にどんどん走りますと、不利になる事があります。風が0度から、5度、10度とシフトしてどんどん走りますと、目標物から遠く離れてしまい、いざ、目標物に近づきたい時、角度の悪い方向で延々走る事になります。
幸い、そういう時に、風が逆にシフトして0度から355度方向にシフトしてくれればラッキーですが、
そうでなければ、戻る時に風が20度とかにシフトしようものなら最悪ですね。ですから、中心からあまり遠くへ離れるのはリスクが高い。でも、いちかばちか、風が有利にシフトして一発逆転もある。
レースはヨットの性能、腕、プラス運と言われます。

クローズは風に向かって走る帆走です。そうである限り、ジョギングセーリングであっても、クローズはボートスピードを求めるか、角度を求めるか、クローズとはそういう走りですし、それなら、それを面白く演出して楽しんだ方が、ヨットの持ち味を楽しめます。ですから、最初は常にリボンをきれいに流す舵取りをして、慣れたら、風向を意識、風向を意識すると自分のヨットの登り角度が解ります。風がシフトして、目標物に最短で近づくにはどうしたら良いかも解る。タックも無意識から意識的になります。

ジョギングセーリングは何かをしなければならないゲームではありませんが、面白い謎解きゲームにすれば、面白い演出ができるのではないかと思います。何故、今ここでタックした方が良いのか?風がシフトしているのを解る為には、コースを真っ直ぐ走れなくてはいけませんし、コンパスで進行方向を時折確認する事も必要でしょうし、リボンがきれいに流れるように操船できなければなりません。まあ、陸地で確認もできますが。今まで45度で走れたのに、リボンをきれいに流す為に50に落ちたとしたら風がシフトしています。その5度の風のシフトが有利か不利かを考えて、必要ならタックする。これが面倒と言われれば仕方無いのですが、ぼんやりタックするより、解ってタックすると面白さに繋がると思います。

レースのブイ回りの場合は、そのブイに近づいてきた時、最後のタックでそのブイを回れるかどうかを判断します。その時の風向を考慮して、このまま走ってギリギリ上って回れるとか、ちょっとシフトすると回れ無くなったりします。それが上りの難しさ、面白さでもあります。実際のレースは他の艇が居ますから別な事も考えなければなりませんが、ジョギングセーリングではそれは無いので、ただ、レースのテクニックを使って、謎解きゲームをする。より面白いゲームをするには、ルールを知る必要があります。この場合はレースのルールでは無く、風とヨットの関係のルールです。それを知って、その特徴をいかすゲームです。ただ漫然と走るゲームは最初はそれでも良いですが、年数を重ねるとだんだん飽きてくるかもしれません。それで、レースゲームの要素を少し取り入れて、自分なりに使ってヨットを学びながら、謎解きゲームをしようという事です。

さて、今度は風速の変化です。幸か不幸か、風は向きが変わるだけでなく、風速も変化しますから、それにも合わせる必要があります。風は一時的なブローから、どんどん上がったり、下がったりします。それに合わせて、まあまあ適当に、そこそこでも良いですから合わせて走る。シートの出し入れが最も簡単な方法だと思いますが、他にも方法はありますので、それも知って、遊んでみたら良いと思います。やりたい時だけやれば良いわけです。でも、知識としては知って遊びます。

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