第三十七話 スマイル

楽しい時、自然に笑みがこぼれます。進水式なんかですと、皆さん楽しそうです。そういうスマイルを見ますと、こちらも楽しくなります。ところが、だんだんそのスマイルが減少していきます。夢に描いたヨットライフ、それが進水式を境に現実とのすりあわせが出てくるからです。人によっては、あれこれ検討している時が最も楽しかったという方が居ます。夢と現実のギャップがスマイルを奪っていくからです。

夢を壊すつもりはありません。それどころか夢を持って頂きたい。しかし、夢を即実行できるならまだしも、大抵はそうはいきません。それで、夢は夢として、その方向を頭の隅に置いて、いつか現実にできるように、その方向に向かって、現実のヨットライフを創像していく。いつか、日本一周したい、遠くの島へクルージングしたい、そういう夢をお持ちも方は多いと思います。しかし、それを現実にする為には、今、ここでヨットに、海に、馴染む必要があります。頻繁にセーリングする事によって、それはなされます。

デイセーリングを頻繁に行う事によって、決して遠くへのクルージングでは無いにしろ、海と接し、セールを扱い、ヨットを操作する事によって知識が習得され、体も自然に学ぶ。そこで、慣れた頃、
ちょっと足を延ばしてみる。その延長上に日本一周があると思います。

例え、夢が日本一周では無いにしろ、旅をしたいなら、デイセーリングにおける頻繁なセーリングがその基礎を作ると思います。すべてはデイセーリングから始まると言っても過言では無いだろうと思います。

ならば、クルージングでセーリングにあまり感心が無い方でも、このデイセーリングをいかに面白いものに演出できるかに鍵があります。それが面白く無いと、続ける事ができません。夢を叶える為に、必死になって、今は面白く無いけれども、夢の実現の為に練習するなんていう事では続けられませんから、デイセーリングを面白く遊びながら、将来の夢に近づいていく。

つまりは、デイセーリングを遊ぶというのは、将来、いかなる夢であろうとも、その基礎になるという事です。それで、デイセーリングを面白く遊ぶ為に、ただセーリングするだけでは無く、面白くする為に、意識をセーリングにおいて、舵を持ち、セールをトリミングする。そういう事で、知識を増やし、経験を積み重ねる。細かいトリミングは不要と思われるかもしれませんが、そういう事をする意識がより深いヨットの知識になっていくと思いますので、それは決してクルージングの役に立たないどころか、大いに助けになると思います。

デイセーリングをしながら、たまにちょっと足を延ばす。それでナビゲーションを学び、漁港への入り方を学び、その先に遠くの島でも、日本一周もあります。旅をするには、ヨットに対する深い知識が必要です。それらはデイセーリングの延長上にある。ならばデイセーリングを楽しく遊ぶ。つまり、いかなるヨットであろうとも、デイセーリングをいかに楽しく過ごすかを考える必要があります。

進水式の時のスマイル、それからデイセーリングの時のスマイル、旅をスマイルに過ごすには、その前提にもスマイルが無いと夢を達成する確立は少なく、達成してもスマイルが無くなっていきます。それでは楽しく無い。

デイセーリングは全ての可能性の入り口、全てに通じると思います。また、このデイセーリングを追求していけば深さを知り、そこから旅に繋がっていく事もできますし、デイセーリングを追求する方法も良い。そして、最後には旅を楽しんできた全ての人もデイセーリングに戻ってくる。遊びですから、全ての段階においてスマイルが無ければ意味がありません。ああでも無い、こうでも無い、暑さも寒さもあれば、波飛沫を浴びる事もある。でも、全てをトータルで見た時にスマイル、ああ楽しかったと思えるヨットライフを創像して下さい。

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