第十五話 ダウンウィンド

クルージングでもセーリング自体をもっと楽しみましょうというのが私の主張ですが、それには、ヨットが持つデッドアングル、つまりは風に対して正面に向かう方向以外は、全て何らかの方法で走れるようにする必要があります。デッドアングルは、考えて見れば、これがある為に帆走の方向に工夫が必要になり、これは面白さの演出にもなります。問題はこの逆で、下りをどうするかになります。この帆走ができなければ、帆走自体を楽しむには、半減してしまいます。

レーサーはクルーを携えて、この帆走は当然になるわけですが、クルージングの場合はそうもいきません。スピンを使うには、それ相応の慣れたクルーが必要ですし、ジェネカーを長い袋に収納して上げる方法もあります。でも、クルージング艇、ショートハンド又はシングルセーリングという事を考えますと、もっと簡単な方法は無いか、という事になります。

いろいろ調べてきましたが、ダウンウィンドを楽に楽しむには、いまのところ二つの方法があります。ひとつは、最も簡単な方法ですが、これはジブセールをセルフタッキングにして、ジブブームを設置するやり方です。これはアレリオンのホイト氏の考案ですが、今ではフォアスパー社(リンクページ)にて製作していますので、通販でも購入できます。但し、Jの長さの、フォアステーから10%の位置に設置しなければならないので、多くのヨットがここにアンカーロッカーがあり、ちょっと難しくなります。でも、もし、可能であるなら、通常のジブとメインで、上りから下りまで、全ての角度をこのまま走る事ができる画期的発明だと思います。

 ジブブームは左右に回転し、しかもメインセールのブ
 ームのように、アウトホールがありますので、ブームに
 沿ってクリューを引いたり、緩めたりもできる。メインセ
 ールのルーズフットと同じです。この場合、ジブセール
 は面積が小さくなりますので、フラクショナルリグの大
 きめのメインとのコンビネーションの方が良いでしょう。
 とはいえ、シングルハンドでも、簡単にあらゆるアング
 ルのセーリングを可能にするという点では、実に良い。
 ダウンウィンドの最も簡単な方法です。



もうひとつはジェネカーをファーリングにしてしまう方法です。これはイタリアのバマー社から出ていますが、通常のジェネカーから、コードゼロと言われるセールまで何でもファーリングしてしまう事ができます。ビデオページにデモがありますから、是非御覧下さい。マリーナを出る前に設置して、マリーナに帰ってきて下ろすという事もできます。

 

写真の通り、上はピークと、下はタックのみが固定され、中間はフリーですから、既存のセールの加工が不要で、今あるセールをそのまま使う事ができます。それにジャイブに関しては、シングルセーリングで簡単にしたいのであれば、一旦巻いて、方向転換して、そしてまた展開するという事でも良いわけです。ただ、これには既存のファーリングジブのドラムがあるでしょうから、そこから前側にある程度離す必要があり、写真のようにバウスプリットが必要です。これは今ではマストメーカーから取り外し式のバウスプリットが出されています。

セーリングを楽しむには、このダウンウィンドにかかっているかもしれません。これをうまいことこなせば、セーリングはますます面白くなります。上りは良かったが、ダウンウィンドは退屈だったのではありませんか? ならば、是非、検討されてはいかがでしょうか?

そう言えば、ノルディクフォークはクラシックなヨットですが、ちゃんとセーリングの事を考えています。ダウンウィンドには、ちゃんと独自のファーリングジェネカーを持っています。


 セーリングはレーサーの専売特許で
 はありませんし、クルージング派も、
 もっとセーリングを楽しんで良い。そ
 れがだんだんいろんな発明がなされ
 てきたお陰で、簡単にできるようにな
 りました。
 せっかくの発明品、これらの恩恵を駆
 使して、今まで今一だと思ってきたセ
 ーリングの可能性をもっと広げて、セ
 ーリングをおおいに楽しんで頂きたい
 と思います。きっと世界は広がると思
 います。

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