第124話 ふたつの流れ

欧米における最近の傾向にはシングルハンド志向というものがあるようです。どこの国でも
クルーが不足しているのか、もっとプライベートで乗りたいのか、とにかくそういう傾向にあり
ます。そして、この流れは二つに分かれていきます。

ひとつは従来からある考え方で、サイズを小型化するという事、しかもこの場合、一般的な
プロダクションボートのラインアップにある中での小型化では無く、もっとこだわりをもって求め
られるようです。しかし、実際、そういう方々の要望を満たす高品質の小型艇が少ない、そこで
彼らはカスタムによるウッド、クラシックヨットを求めています。この事が欧米でのウッドボートの
造船所を支えており、小規模で高品質のヨットが建造されています。

日本でも同じような小型化、シングルハンドという傾向は確かにあると思います。しかしながら、
小型サイズで良いのがなかなか無い、ウッドボートは非常に高いので、そこまでは出せない。そ
ういう状況のようです。小型艇に高いお金は払えない。同じ金額なら大きい方が良い、しかし、シ
ングルハンドで小さくしたい。ただ、小さいだけでは満足できない。矛盾です。しかし、これもやが
ては変わっていくのではと期待しています。小さいから安いという式だけでは語れないものがある。
小さくとも、品質にもっと目が行くようになると思います。

さて、もうひとつの流れは、シングルハンド志向ではあるが、だからと言ってサイズを小さくはしたく
無いという、大型志向のシングルハンド派です。それでどうするかというと、それこそ文明の力を最大
限利用しようという事になり、研究の結果が欧米で出てきました。どちらもアイデアは似ています。
まず、メインセールをファーラーに変え、ジブセールはセルフタッキングジブ、そしてジェネカー、ファー
リングジェネカーとの組み合わせ。ファーラーも油圧や電気によるファーリングシステムです。これらは
従来でもありました。電動ウィンチ付きのヨットに乗って思う事は、力が要らない、非常に楽であるという
事です。どんなに大きなセールで、強風でも、ウィンチのボタンを押すだけで良いのです。子供でもでき
ます。しかし、ひとつだけ、このセルフテーリングの電動ウィンチが逆転したら良いのにという事です。
ジブシートを引く、これはOK、でも出したい時はシートを解いて出してやらなければならない、これも
スイッチひとつでできるなら、と思っていました。ところが、やはり同じなんですね。油圧式によって、シート
を引くのはもちろん、出すのもOKというシステムが造られています。もっとも、以前からメガヨットには
採用されていたようですが。

これによって、セールを上げる事から、セールのトリミングまで、全てワンタッチのボタン操作でできるの
です。舵を持ったまま、コクピットからの操作で全て楽々。これが欧米での流れです。

さらに、進んで、2基掛けエンジンを搭載、しかも電気で駆動、とても静かで、2基掛けですからその場で
ぐるっと回るのも誰でも楽々です。そして、さらに、バウスラスターをつけて、2基エンジンとのコンビネー
ションですごいのがあります。これはまだヨットには採用されていないのですが、ジョイスティック1本で
狭いマリーナ内を操船する為に開発されました。ジョイスティックを横に倒すと船が横に動くのです。
すごいですね、技術の進歩は。


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