第七十八話 セールA

まずはセールを上げる。ラフに縦皺、横皺が出ないぐらいにテンションをかけて、セール角度は風向と前進する角度の1/2を目安に、例えば、真横からの風であれば、90度ですから、セールは反対舷の後ろ45度という具合です。ヨットにスピードがつきますと、ヨットが前進する事によって起こる風があります。よって、真横から吹いていた風は前側によってくる。これを見かけの風と言いますが、この風向を使います。マストトップの風見は見かけの風の方向を示してます。よって、風は前側に回り、セールはもう少し引き込む事になります。斜め前方から吹いている風もヨットがそのまま静止すると、風は横側に移動する。これは真の風です。見かけの風はヨットが進む風が加わってますから、真の風より速いという事になり、この見かけの風が速い方がより速く走れる事になります。つまり、角度を落として一旦スピードをつけて、見かけの風を速くして、それから角度を稼ぐ方が良い事になります。微軽風時はタック後、角度をキープするより、一旦落として艇速を上げた方が良いという事になります。

風の強さによって、ドラフトの深さを調整しますが、バックステーアジャスターとアウトホールを使って、微風なら緩めに、強風ならテンションをかけていきます。どの程度かは、実際に走りながら状況を見ながらやる事になります。微風ならドラフトは深く、揚力をできるだけ大きく、強風になるに従って浅くしていく。強風で深いドラフトは揚力も大きいのですが、大きくヨットをヒールさせる力も増大し、うまく走れなくなります。それで風を逃がしたりしますが、その前に、ドラフトを浅くする。もし、どうやっても浅くできない場合、セールが伸びてます。深いドラフトはヒールばかりして前進力にならない。よって、風を逃がして走らなければなりませんので、それではせっかくの快走チャンスを逃がしてしまう事になります。セールは主機です。

それとドラフトの位置です。セールには色のついた線が横に引いてあります。それを下から見ますとカーブが見えます。それで、どこにドラフトの頂点があるかを見て、その位置をハリヤードを使って調整します。但し、強風の場合、セールが風の抵抗を受けてますので、無理してハリヤードを引くとハリヤードが切れる事もあるので、少しセールをシバーさせた時にやった方が良いと思います。

これで、セールの角度、ドラフトの深さも決まった。もちろん、どの程度の風の時どのぐらいの量を造るかは、何度も乗って確かめなければなりません。それがまた面白いところです。

さて、風というのは一様に吹いているわけではありません。上に行く程風が強くなる。という事はセールの形状は上から下まで同じというわけにはいきません。ここでツウィストという事が出てきます。先程、見かけの風の話をしましたが、あれはヨットのスピードが上がるという事で、見かけの風は真の風より前側に移動するという事でした。今度はその逆です。下側の風より上側の風の方が速いという事は、上側の風は下側の風より横に回る。という事になります。風が横に回ればセールは開くと同じで、セールの上部を開いて、セールをツウィストさせると、上部から下部まで風に対して適度な角度になるという理屈になります。

メインシートは緩めるとブームが外に出て、風を逃がす。同時にブームは上側にも移動しますのでリーチが緩む事にもなります。マストトップからブームエンドまでの距離が短くなるので、そこにはったセールのリーチはゆるやかなカーブを描く事になり、そこから風が逃げていく。シートを引くと、ブームは下がり、マストトップからの距離は長くなるので、リーチはパンと張って閉じる事になる。

ツウィストを造るには、メインシートを適宜出して、その状態からメインシートトラベラーを風上に引き上げてブームを引き込む。そうするとセールのフット部は中央よりに引き込まれ、シートを出しているのでリーチは開いている。これでツウィストができます。このふたつのコンビネーションでツウィスト量を調整します。メインシートを少し出して、トラベラーを引き上げると量は少し、シートをもっと出して、トラベラーを引き上げると量は大きくなる。これも実際の走りで試行錯誤していく事になります。ブームは船体の中心線から上には引き上げない事。中心から上に引き上げると、セールが中心からもっと風上側に来ます。これは角度としては宜しく無い。
一旦決まったら、艇速が落ちたら、角度を落として、トラベラーを風下に落として艇速をつける。艇速がついたら、トラベラーを引き上げる。この操作は一旦決めたセールカーブを変化させる事無く操作できます。

強風の上りの時、風は逃がしたいが、上り角度も稼ぎたい。こういう時は、このツウィストを大きくして上部で風を逃がし、フット部で角度を稼ぐという事もできる。今度は、トラベラーが及ばないぐらい
セールを出している時です。この時はトラベラーが役に立たないので、ブームバングを使う。バングを引くと、ブームが下側に引っ張られます。引けばリーチは閉じ、出せばブームが上がって、リーチは開く。強風の時はバングを緩めておかないとバングの取り付け部が吹っ飛ぶ事もあります。テコの原理で、あんな短い距離で繋がっているんですから、相当大きな力が加わります。

という事は、メインシートトラベラーも同じです。ブームの中央あたりで引くのと、ブームエンドあたりでひくのとでは力のかかり方が全く違う。前側ならウィンチ使わないと引けないのが、エンド近辺なら手で引ける。それに強風の場合、ブームがしっかりしてないと、ブームが曲がる何てこともあります。ですから、メインシートトラベラーはコクピットにあった方が良いわけです。それに、シングルでも舵握ったまま操作できるんですから、絶対その方が良いとおもいます。

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