第五十話 セーリング主体

セーリングを楽しむ事を主体としたら、後は、それを中心に考えれば良いわけです。まず、ヨットは気に入ったヨットである事が重要ですね。そのどこを気に入るかも自分勝手で良い。見かけのデザインでも良いし、性能でも良いし、何でも良い。気にいって可愛がる事です。重いヨットであっても、デザインが気にいってしまったら、それをいつも美しく、そして、セーリングに出すのにちょっとヘビーでも、気持ち次第です。どんなヨットでも面倒だと思えば、気軽に出せなくなる。このぐらい朝飯前と思えば、出すのには億劫にならなくて済む。ヨットは面倒くさい事をして楽しむものです。その面倒くさい事をわざわざしに行くのですから、楽しむにも多少の努力は必要です。でも、できる限り気楽に出せるように、そういう工夫も必要でしょう。出し入れをできるだけ気楽に行えるように練習も必要です。それさえできれば、後はセーリングを堪能すれば良い。

セーリングを楽しむには、ヨットをいつもきれいにしておく事。無駄な荷物をたくさん積み込まない事
無駄な荷物がたくさんあると、メインテナンスをする時に邪魔になって、やる気は失せてしまう。邪魔な荷物が無いと、きれいにするにもやり易いし、内外ともにいつもきれいにしておくと、何か異変があっても早期に気づき、対応がし易い。中古の販売なんかしますと、オーナーの私物がこれでもかと出てきます。あるはあるは、同じ物が2個も3個も出てきたり。こうやって、ヨットも身軽に、そして自分も身軽になる事。

本なんか読みますと、理想的なセールカーブが出ていたり、操船の仕方が解説してあります。それを実行する為に、やり易くする為に、シート類やハリヤード類が古く硬くなっていたりすると、スムースさに欠けてきますので、新しくする。メインセールのスライダーが滑りにくいなら、潤滑剤を吹き付けるとか、ベアリング付きスライダーにするとか、これも予算によって、安いものから高価な物までありますが、できる範囲内で工夫しながら、艤装品がスムースに動くようにしておくのがストレスを溜め込まない秘訣です。ウィンチもたまには分解して、掃除、グリスを塗ってやりますと、スムースに動くようになります。これ、やってみますと意外に簡単に出来ます。注意すべきは部品を海に落とさない事ぐらですかね。

とにかく、セールを上げる、下ろす、シートの出し入れ、バング、いろんな動かす物がスムースに出来る事、力が足りないなら、ブロックを増やして、操作しやすくするとか、そして、どの位置からどう操作するか、舵握りながらするか、オートパイロットを使うか、理想的な帆走を目指す前に、使う道具をいかに操作するかを考えて、自分のやり易い方法、艤装、配置などを考えても良いと思います。もちろん、時間をかけて、経験しながら出てくるものですが。こういう中から、意外に新しい発見があったりします。

セーリングというのは、いろんな要素が複雑にからみあっていますので、ひとつひとつの操作は簡単でも組み合わせるとたくさんのパターンになる。波も風も異なりますので、それらを全て解き明かすのは至難の技ですが、ひとつひとつの艤装品の動きと作用を学び、自分の帆走のパターンをひとつづつ解き明かしていく。それには長い年月が必要ですが、紐解く面白さも出てきます。まるで謎解きゲームかもしれませんね。

ヨットでは絶対的な物が何ひとつありません。セールやハリヤードも固定しているようで、風の強さで伸びたりします。波も風も一定ではない。全部が同時に動いています。何かひとつ、絶対変わらない物があると、それを基準にし易いのですが、全部が同時に変化するので、難しい。そこであえて言うなら、自分のフィーリングを基準にするといかがでしょうか。気持ちの良いセーリングを目指す。これは曖昧ですが、何度も乗って、気持ちの良いセーリングができると、大抵は良い走りをしているものです。微妙なバランスが取れているものです。操作のひとつひとつを学んで、トータルでグッドフィーリングを目指す。

ヨットというのは、初心者であっても、そのレベルでグッドフィーリングが得られるという大きなメリットがあります。それに年とってからでも始められますし、体力が無いならそれなりにできますし、誰でもできるところにその良さがある。大切な事はそれに合わせてヨットを選び、乗り方を選ぶ事だと思います。

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