第十話 フルバテンとスライダー

最近ではフルバテンにレージージャックというのが増えてきました。それでフルバテン
にしますと、セールの自重でバテンをマスト方向に押し付ける事になり、上げる時、
最初は良いんですが、途中からセール上げるのがかなりきつくなります。セールの
自重プラススライダーとマストの摩擦が大きくなります。

そこで、このスライダーを改良してもっとスムースに上下できないか、という事になりま
すが、ハーケンはバットカーというシステムを造り、マストグルーブにジェノアトラックの
ようなレールを設置、スライダーにベアリング付きを採用。これは確かに非常にスムー
スですが、金額もそれなりにします。もっと安いのは無いか、ラトガーソンのスライダー
というのがあります。バテン部にスライダー、マストグルーブの外側両サイドに小さな車
がついているので、その車がマストに押し付けられますが、車ですから上に引かれれば
回転して、摩擦を軽減します。今のところ私の知る限りでは上下スムースに動き、使い
勝手は良いようです。それに安いです。おまけに、時折セールコートというスプレー式の
摩擦を軽減する物がありますが、これを吹きかけておくともっと良い。また、こういうスプ
レー式で良く知られるCRCはプラスチック部には吹きかけない方が良いようです。

レージージャックももう一般的ですが、昔々、外国から聞いたレージージャック、何だ
それゃって感じでした事を思い出します。それにレージーバッグ(呼び方はいろいろ)と
いうブームカバーと一体になったやつもありますが、個人的には、セーリング中に、ブー
ムの上にあんなものがいつもあるのは好きでは無いのですが、収納する時とかは確か
に便利かもしれません。

そして次にメインセールのブームファーラー、ブーム巻取りで、ちょっとブームが大きく
なりますが、バテンは入れられるし、トラブルがあってもブームの高さで手が届く、さらに
トラブル時でもセールを下ろす事もできますので、メインファーラーの主流になると思い
ますが、各メーカーも次々にブームファーラーを出しています。

さて、お次はと言うと、これを電動とか油圧で動かそうという事で、大きなセールはそうい
う事になります。まずは電動ウィンチを使ってセールを上げ下げをする。もっと発展する
とセールを巻き取る軸自体が電動又は油圧で回転して、セールの上下をする。コクピット
からスイッチポンです。これらは海外にでかいヨットがたくさんありますから、そこから出て
来る。そして、それらがだんだん小さなヨットにも採用されていく。考えてみれば、いろんな
発明品のおかげで、昔に比べれば随分楽になったもんです。ジブファーラーだって、今で
は電動で回転するのがあります。まあ、こんな物は余程大きなヨットでないと必要ありま
せんが、世の中、どんどん便利に楽にセーリングできようになっています。

この先何がほしいか、もう充分なような気がします。おっと、ひとつだけありました。これは
最も重要で、電動化できないもの。これだけ便利になったのですから、セーリングを楽しも
うという気持ちです。それさえあれば、そういう気持ちをサポートしてくれる艤装品はたくさん
ありますし、自分なりの工夫も出てくるでしょう。準備は全て整っています。後は気持ちだけ
だと思うのですが。

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