第三十五話 デイセーリングを演出する

1日3時間前後、その範囲内で島周り、或いはブイ回り、そういう設定を自分で作って
より効率の良い走りをしてみる。目指す島、或いはブイでも何箇所まもっておくと良い
でしょう。まずは、そっちの方向目指してタック繰り返してでも走る、そして帰ってくる
それでも良いでしょう。でも、少しそれに慣れてきたら、今度は目指す方向をコンパ
スで何度の方向にあるかを確認しておきます。例えば、真北の0度の方向に目的地
があるとします。その時、風は何度の方向から吹いてくるのか?もし、真北の0度から
目的地と同じ方向から吹いているのなら、まずは上りで、左、右、どちらにタックしても
同じ条件になります。障害物のあるなしを考えて、どちらからアプローチするか、障害
物がなければどちらでも同じです。それで、上り角度を稼ぐ走り方と、スピード重視の
走り方があります。もっと本格的になると、その両方の最も良い走りがありますが、そ
れはこの際おいといて、上り角度重視ならスピードがやや落ちる。スピード重視なら
上り角度がやや落ちる。いりいろ試して、意識して走ってみてください。

風は結構シフトするものです。真北から吹いていたのが、355度に変わってきたり、
或いは5度になったりします。355度にシフトすると、0度方向にある目的地は左右
同じ条件では無くなる。目的地に向かってクローズで走る。45度で走っているとして
それが50度以上上れなくなったとしたら、風は5度、東の方向にシフトしています。
という事はここでタックすると、反対舷では320度で上れる事になります。つまり、目的
地0度に対して40度で上れる。当然、左舷からのアプローチの方が有利になります。
さらにシフトすると、もっと有利になる。或いは、今度は逆のシフトになるかもしれない。
こういう事を考えて走るのもある。

目的地に向かって、ジグザグに進むのは、タッキングのロスを無視するなら、大きく
1回のタックで目的地に近付くのも、何度もタックしながら近付くのも、数学的距離に
おいて走る距離は同じになります。タッキングロスを考えるなら、何度もタックするのは
効率が悪い。しかしながら、風がシフトした時の事を考えるなら、目的地へのコースから
大きく離れて、1回のタックで目的地にアプローチすると、これはギャンブルで、風が不利
な方向にシフトしていくと大きなロスになりかねない。でも、タック時に有利な方向にシフト
してくれると大きなゲインになる。だからギャンブルです。

それに最後の目的地に向かうタックで、充分ブイをかわせないないと、のぼり角度には
限度がありますので、最後にもう2回のタックをしないと回れない事にもなる。紙に図を
書いて考えて見てください。そして実行してみてください。こういうアプローチはレースで
考える事ですが、スポーツセーリングでもやって遊んでみても良いのではないかと思いま
す。もちろん、勝ち負けはありませんので、あくまで知的ゲームとして遊んでみてはいかが
でしょうか。そうすると、単純な目的地へのアプローチが複雑な知性の遊びに変わります。
何もレースしなくても、こうやって遊んでも面白いし、もし、ローカルレースに出るような事
があればかなり有利になります。

そして、各走りで、できるだけ効率の良い走りを目指す。セールの張り方、形状を考える。
ヨットはセールに対して風の流し方の効率と、それに少し慣れてきたらコース取りの幾何学
的遊び方も面白い。スムースなタックを遊び、セール形状を遊び、コース取りを遊ぶ。おま
けに潮流があって、風がシフトしたり強弱がある。波が出てきたり、複雑な様相を呈します
ので、その気なれば飽きるなんて事は無いのです。飽きる程極める事はまず無理でしょう
から、より近付くという事を遊ぶ事になります。そうやって気がついたら自由自在になって
います。レースの練習をしてるようですが、それをスポーツとして、自分で演出しながら遊ん
で頂ければ、面白いのではないかと思います。

こういう事を真剣に遊んでいますと、3時間程度で充分なのです。長くなると疲れてしまう。
そして、各走りの中で、ピタッと来る走りができる時がありますから、そういう感覚を充分
味わって頂きたいと思います。ただ、のんびりぶらぶらしているのとは違う感動が出てきます
最終的にはこれを味わって頂きたい。各走りも面白いですが、その時折見せる調和が何とも
言えません。それは、その前に真剣に走っているからこそ味わえるものです。これがスポー
ツセーリングの醍醐味でもある。それでいてレースではありませんので、屈辱感も無く、ある
のは充足感なのです。

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