第三十二話 良いヨット

あるヨットオーナーから楽器を頂きました。それにすっかりはまって、もっと良い
楽器がほしくなる。それでいろんな人に良い楽器は何が違うのか聞いて回る。
見た目には殆ど変わらないのです。もちろん、見る人が見ると良いかどうかは
解るかもしれませんが、私には殆ど変わらない。同じに見える。でも、その価格
差たるや10倍や20倍ぐらい軽く差があります。それで何が違うのか聞きますと
材質が違うとおっしゃる。頑丈だと言われる。造りが違うと言われる。これって、
ヨットも同じですね。

それじゃ、楽器の本質においてそれがどんな影響があるのか聞いてみますと、
音質が違う、音程が良い、そういう事らしいです。この音質の為に何十倍もの
お金を支払うのです。音質は確かに楽器の命でもある。誰かが何億もするストラ
ディバリウスを購入するのも、この為でしょう。

簡単に言えば、グッドフィーリングを得る為でしょう。楽器を鳴らして、良い音色
が出るとやる気がおきてくる。うまいへたはありますが、鳴った時にきれいな音
が出るのと、きたない音が出るのとではやる気が全く異なってくる。へたでゆっくり
しか弾けないにしても、良い音色は気分を良くしてくれます。結局はグッドフィー
リングを得られるかどうかにかかっている。グッドフィーリングが得られないと、面
白く無いのです。

ヨットも同じだなと思います。どんなにきらびやかなルックスでも、フル装備でも、
セーリングしてグッドフィーリングが得られないと面白くない。材質が違う、工法が
違う、デザインが違う、船型が違う、そういう事を言いますが、要はフィーリングが
違うという事に尽きます。いろんな装備がありますが、最も重要なのはこのグッド
フィーリングにあります。何も無いヨット、でも、グッドフィーリングが得られるなら
最高のヨットです。フル装備であっても、グッドフィーリングが得られない、或いは
得にくいヨットはよろしくない。

グッドフィーリングはヨットそのものもあるでしょうが、施した艤装にもよります。誰
でも高級ヨットに乗れればそれに越した事は無いのですが、そうもいかない。それ
でできる事をします。操作性の良さという面では、艤装を工夫してみるのも、グッド
フィーリングを得る要因になると思います。どんなギヤが良いか、それをどう配置
するのが良いか、そういう事を考えても楽しいし、セーリングが面白くなると思いま
す。安く上げる為に、そのモデルのぎりぎり最低のモデルにする。こういうのは
作動はできるが、グッドフィーリングは得られない場合があります。少し余裕がある
ぐらいのギヤ選びも必要です。例えば、ジブファーラー、25フィートから30フィート
用とか書いてある場合があります。安くする為に30フィートのヨットに設置して、
使えるのは使えますが、重かったりします。せっかく買ったのにこれではグッドフィー
リングが得られない。ひとつ上のモデルにすれば、軽くスムースに巻ける。そういう
事があります。

目指すは”グッドフィーリング”、これにつきる。そしてグッドかバッドしか無いのかと
いうとそうでは無くて、よりグッドとよりバッドがある。

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