第十話 あるオーナー

33フィートのヨットをシングルで乗られます。乗るだけならそう難しい事では
ないと思いますが、このオーナーは乗りこなされている。決してベテランという
わけでは無いのですが、研究熱心で、行動力がある。それをまた楽しんでおら
れます。完全なスポーツセーリングです。シングルでのジェネカーの展開、そし
てジャイブまでをいかにスムースに行うか、考え、実行される。話を聞きますと
ヨットが面白くてたまらないという感じが良く伝わってきます。決して、遠くへ行く
だけがヨットでは無いなと思います。

また、あるオーナーは日常は殆ど動かない。けれども、年に何回かはちょっと
遠出される。これもまた、ヨットの乗り方のひとつ。特にセーリングについて研究
するわけではありませんが、その代わり、漁港でのとめ方、陸に上がるにも
場合によっては干満の差がありますから、防波堤が非常に高くなって上がれ
なかったり、そういう経験からいろんな工夫がなされています。

前者と後者では、同じヨットでも世界が違う。でも、典型的なヨットの使い方の代
表ではないかと思います。前者はレースでは無くても、セーリングを楽しみ、腕
を上げるのを楽しみ、スピード感や操作のスムースさ、まさしくスポーツ的感覚
です。一方、後者は船旅を楽しみ、知らない場所での航海、停泊の仕方、いろん
なノウハウを研究し、その地を楽しむ。まさしくクルージングでしょう。

スポーツセーリングとクルージング、それにヨットをキャビン中心に使う。使い方
としてはだいたいこの三つ。どれかに限定する必要性は無いので、これらを自分
のスタイルでブレンドする。日常はスポーツセーリング。これは時間が無い人に
はうってつけ。暇がある時はクルージング。風が無い時はキャビンで過ごす。
使い分けをしたら良い。でも、実際はその中心になる乗り方が殆どになりますか
ら、それをいかに面白くするかがポイントでしょう。

日常のデイセーリングに、クルージング的な乗り方では飽きてくるし、クルージング
において長時間のスポーツ的セーリングでは疲れてくる。ヨットもそれなりの物が
ありますから、そういう事をきちんと考えてやると、充実したヨットライフが堪能でき
ると思います。デイセーリングにロング用のヨットは可能ですが、向かない。ロング
にスポーツ用では可能ですが向かない。どちらでもというヨットもありますが、割り
切ってそれ用という方がもっと目的とする物を面白くすると思います。

最後にキャビン中心に使うというのは、それでも良いですが、日本人には向かない
ヨットで生活できる人なら良いかもしれませんが。

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