第七十四話 ブルックマンデイセーラー

ブルックマンという造船所は日本ではあまり馴染みが無いと思います。アメリカの造船所
ですが、セミカスタム、カスタム艇を主としています。この造船所から新しいデイセーラー
艇が出ました。

 

42フィートというサイズですが、小さい子供と奥さん乗せてファミリークルージングしている
姿、気楽なセーリングを楽しんでいます。スタイルはクラシック、低いフリーボードに狭い
ビームですから、ボリュームはあまりありません。ですから、お父さんの操船も気軽です。
高級感ある内装も実にシンプル。それで充分なのです。良く見るとセルフタッキングジブ、
それに電動ウィンチ、まあ、これまでにご紹介してきたヨットと同じ考え方ですね。そして
もちろん、高いスタビリティーと速いというコンセプト。シングルで、ハイクアウト無しで、
スポーツ的に、それも楽に走れる。

次々にこういうヨットが出るという事は、それだけ需要があるという事ですから、確実にその
流れがある。こういうコンセプトは本当は日本なんかで出るべきではなかったかと思うのです
忙しい日本人、そういう人達がヨット遊びをするなら、こういうヨットがピッタリだと思います。

ただひとつ残念な事があります。それは価格が高いという事です。アメリカの造船所が狙って
いるマーケットは初心者では無く、ビッグボートからの乗り換え組です。50フィート、60フォート
をクルーを雇ってのってきた。でも、もう、たくさんだ。クルーの事、メインテナンスの事、心配
ばかり、乗ってる方が少ない。ならば、そんな煩わしい事はやめて、気軽に一人でもセーリング
が楽しめるヨットにしよう。そういう声に対応して造っている。ですから、そういう方々がうなるよ
うなヨットしか作らない。それともうひとつは、まだまだたくさんは売れないので、大量生産という
事はできない。ひとつひとつ職人の手造りです。

一般はまだまだ大きなキャビンを求めていますから、そういうマーケットにはシングルハンド的
デイセーラーを導入してもかなわないというのが現状でしょう。スタイルはこのままで、シンプル
な内装もOK,それをもっと安く造ってくれるようになると、買いやすくなるんですが、需要が先か
ヨット導入が先か、造船所にとっては賭けですね。

日本でも、将来はこういうヨットの台頭があると思います。でかいヨット持ってるが、気がつけば
殆ど日帰りしかしていなかったとか、年に2,3回しか乗れなかったとか、クルーが確保できない
とか、考えればそうなのですが、ならば、シングルハンドの気軽なヨットはいかがでしょうか?
とは言ってもまだまだ割り切れないというのが現実です。でも、この現実を冷静に見たら、こう
いうヨットの方が、どんなに気軽で、面白いかというのが解ると思います。

キャンピングカーを買ったのはいいけれど、殆どキャンプに行った事が無い。忙しくていけない。
かといって、これで近所をドライブする気にはなれない。ならば、スポーツカーの方が使い勝手
は高いのでは?これと同じだと思うんです。

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