第二十八話 セーリングの要領

できるだけ同じヒール角度で走る。ブローが入ったらタイミング良く風を逃がし、できるだけ
ヒール角度は同じにする。風を目一杯捕まえて、シートを引いて、大きくヒールしながら走る
のはよろしくない。真っ直ぐ走るには舵を相当切って走らないと、風下におとすようきらない
とヨットは風上に切りあがる。という事は舵には相当な水流抵抗があたっています。これは
いけません。舵はできるだけ切らないで走る方が、抵抗は少ない。舵にかかるストレスは
かなりなものです。自分で舵を持っていますから、どれぐらいの抵抗があるかすぐに感じます
そして、シートを出すと、舵は軽くなり、大きくひーるしていた船体もスーっと起き上がる。

上りではセールを目一杯内側に引き込みますが、風の強い時は大きくヒールしてしまう。それ
でセールはできるだけフラットに、バックステーを引いて、アウトホールも引いて、それでも、
風を逃がしたい時は、シートを緩めるのが簡単ですが、ジェノアシートのリードブロックを後ろに
移動させれば、フットにテンションはかかるが、リーチが開くので、セール上部から風が逃げる
セールの下側で走る。メインセールはシートを緩めて、風を逃がすが、上り角度を稼ぐ為には
トラベラーのブロックを風上側に引き上げる。シートを緩めるとブームは外に同時に上側に行き
ます。その分、風が逃げる。でも、上りも悪くなるので、ブロックを引き上げる。ブームが上に行く
と風はリーチが緩むので逃げる事になります。つまり、メインシートとトラベラーの位置で、ブーム
を外側にやらずに、上側に移動させる事もできる。ブームをどの位置に持っていくかで、風が変わる
想像してみてください。そして、トラベラーの及ばない位置ではブームバングがその代わりをします。
ブームが上がれば、リーチは緩むので風が逃げる。ブームが下がれば、リーチはテンションがかかり
風を捉える。これはちょうど、ジェノアのシートのリードブロックを前後に動かす事と同じ役目になり
ますね。

それから、ヨットにはスピードと角度という問題があります。つまり、ある地点を効率良く回るには、その
地点に到達する最も効率の良い走り方というのがある。それはスピードと角度です。まあ、こんな事
まで考えて走る必要は無いかもしれませんが、スピードが落ちたら、タック後とか少し角度を落として
スピードを上げて、そして角度をつける。これぐらいはしても良いかと思います。風が一定なら、ヨットは
どんな角度でも同じスピードで走れるかというとそうはいきません。それに風に向かって真っ直ぐは走れ
ない角度がある。風に向かって真正面に走れれば本当に良いでしょうが、考えてみれば、こういうばらつ
きや走れない角度があるという事がヨットを非常に面白くしている。同じ地点に到達するにしても、走り方
によって、差がでます。これを明確にするのがレースなのでしょうが、スポーツクルージングでは、レース
ではありませんので、そこまでしなくても良いとは思いますが、ヨットの持つ特性を考えて、島周りとか
のセーリングやスピードを楽しむ、操作を楽しむ、感覚を楽しむという知的遊びをしてみると面白いと思
います。

次にセールカーブ。ドラフトの深さは微風では深く、強風では浅く、前後位置は中央からやや前。これは
ハリヤードのテンションで行う。ハリヤードを締めれば、ドラフトは前へ、緩めれば後ろに移動します。
ドラフトの位置、深さ、風を捉える、逃がす、舵の操作、これらを実際に実践でマスターしていくにはとて
も難しい。ですから終わりがありません。完全マスターなどできません。でもそれで良い。ステップアップ
を楽しみ、終わりの無い遊びを楽しんでいるのですから。その時々の感覚を楽しんでいるのですから。
でも、少しづつ解ると、面白さはどんどん広がっていきます。自分の操作がたとえ偶然でも、ピタッときた
時、何とも言えないぞくぞくするような感覚が訪れる。ああ、良いセーリングだったと思える。そして、また
このフィーリングを求めてセーリングにでかけます。これが最高のセーリング、いつも計画した通りには
行きません。風の無い時もある。でも、セーリングに出るときはこれを求めたくなる。そして、終わって、
今日は良いセーリングだたと感じる時、充実感と幸福感さえ感じます。この時飲むコーヒーは最高です。

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