第四十六話 アリランレース

韓国の釜山から博多までのヨットレースが無事終了致しました。このレースは2年に1度、
ゴールデンウィークに行われるもので、今年で17回目、という事は34年の歴史があります。

全行程107マイルと、博多と韓国はこんなに近いのです。意外でしょう?今年の参加艇数は
40艇で、ORCクラスとオープン参加に分れています。

私は40フィートのセーバー402で参加、4月30日の夜出発し、機帆走で16時間、まずは
釜山へ回航し、5月1日到着、2日は休みで、3日の午後12:00スタートとなりました。

釜山は大きな都市で、人口400万、高層ビルが立ち並ぶ大都会、例外に漏れず、到着した
夜は焼肉です。面白い事に、焼肉と言っても、牛肉か、豚か、それとも鳥肉か、これで焼肉屋
はそれぞれ専門で、どの肉を食べたいかによって店が違う。牛肉なら、そこには他の肉はおい
てないのです。それに、我々が行った店は雌牛と書いてましたね。

それは兎も角、3日の12:00スタート、実際は15分延期でしたが、とにかく風が無い。非常に
辛抱の要るレースでした。ただ、対馬を抜けて夜中、15ノットぐらい吹いて、7ノットオーバーで
少し走れましたが、後は3ノットとか、最悪は博多湾に入って、無風状態が続き、また干潮で
潮の流れで押し戻され、風を探して、少し進んでは流され、そんなこんなで湾内に6時間も閉じ
込められてしまいました。結局、所要時間38時間と非常に長いレースで、とにかく我慢のヨット
レースでしたね。着順はオープンクラス25艇中の14位、まあ、重目のヨットに超微風という事
でご勘弁頂きたい。実は、オープンクラスファーストホームはマムだったんですが、12時間も差
がついてしまいました。まあ、レーサーの軽いヨットだし、それに今回の超微風では仕方ないと
言い訳しながら、とにかく終われば楽しいレースでした。もちろん、そんなヨットと戦うほどの腕
はありませんが、楽しければ良いとしましょう。ORCクラスではファーストホームとセカンドの差が
わずか50cmと、まあこれだけ走ってこの差ですから、すごいもんです。レーサーは風が無い時
はマストにクルーを登らせて、高い位置から風を探させていました。こちらも一度マストに登りました
が、それはトラブルのせいで、風を探しての事ではありません。この違い!

クルージング艇であっても、こういうちょっとロングなレースでは、結構面白いし、また多いに勉強
にもなります。通常、ロングでクルージングしていると、たいした事も考えずにただセーリングす
るか、ちょっと風が止まるとエンジンでもかけて行きますか、となる。でも、レースですから、そうは
行きません。という事はどこに風があるか、どういうコースを取るか、そんな事を考えなければなり
ません。必然的にそういう意識で見ますから、とても勉強になりました。それだけではなく、そういう
目的意識があるからこそ、面白くなる。

今回はGPSと風向風速計がありましたので、とってもハイテクセーリングができました。コンパス針路
とGPS針路の違いで潮の流され方が解ります。風向風速計で常に風を見ながら、艇速のチェック、
高いマストトップの風見をあまり見なくてすんだので、首が痛くならなかった。

GPSで目的地を設定、そのラインからあまり遠く離れない程度にタックをしながら、ダウンウィンドは
わずかしか無く、ほんの少しジェネカーを上げた程度、のぼりのレースはいろんなコースが取れるので
皆、バラバラと散っていく。面白いレースになります。今回は高気圧に覆われ、昼間は陸側の空気が
暖められ上昇するので、海側からの風が吹き、夜は陸側の空気の方が急速に冷やされるので、海側
の空気が上昇して陸からの風が吹く。勝ったのはそのコースを取っていた艇でした。

博多湾に入って6時間、とてつもなく長い時間に思え、明るいうちにフィニッシュのはずが、到着は翌
午前2時過ぎ、とにかく忍耐の要るレースでした。でも、終われば、面白かった。レースは誰もが真剣
になります。人より少しでも速くと思います。目的が明確で、その為に全てを注ぎますから、結果、面白
いのでしょう。のんびりするから面白い、楽しいのでは無く、集中できるから面白い。つまり明確な目的
です。遊びも信剣です。信剣だからこそ面白いのではないでしょうか

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