第十七話 ちょっと贅沢

ヘッドセールはジェノアのファーラーが一般的なのですが、ここでちょっと贅沢な試みをしてみます。
ヘッドセール用に2枚のセールを持つという事です。例えば、デイセーリングやシングルハンド時等
では、ジブをセルフタッキングのファーリングジブとし、主にメインセールを操作しながら、簡単操作
にしてしまう。近場のセーリングではタッキング回数も多くなり、長い1本を走るよりも面白いかもし
れません。それでいて、メインセールはきちんとトリミングして、操作、その反応を楽しむ。そして、
もちろんダウンウィンドはジェネカーのファーリング方式で、ダウンウィンドを楽しむ。もともと、大きな
ジェノアにしても、ダウンウィンドは得意ではありませんので、こういう方式でしたら、結構簡単操作
で尚且つ、楽しめるのではないかと思います。

それで、遠出する時は、ジェノアに変更する。遠出では同じタックで長距離走りますので、大きな
セールでも楽に走れます。それに遠出の場合、仲間と行く事も多いでしょうから、クルーも居る。

セルフタッキングジブはセールエリアが小さいので避けたがる人が多いのですが、速くなくて良い
クルージングだからと言いながら、セルフタッキングはセールエリアが小さいと矛盾があります。
微風、軽風では確かにそうかもしれない。でも、一旦吹いてくると、フルセールのままで走れる。
そうそう悪い事ばかりでは無いと思うのです。特に冬場の強風時、シングルハンド、なんかですと、
このセルフタッキングはありがたいぐらいです。それで、吹かない季節はジェノアに変える。と言い
ましても、吹かない時は大きなジェノアでも走らない。

こういう艤装で、納めた艇があります。通常は奥さんと二人か、素人のゲストですから、セルフタッ
キングを使用されています。そして、遠出したり、お祭りレースに出たりする場合はジェノアに変える
こういうやり方で、結構楽しんで頂いています。とにかく、セーリングを気軽にいつでも出せる状態を
考えて造る。セーリングを楽しむのが基本ですが、大きなセールにして、そのせいで気軽に出れなく
なるなら、小さくして気軽に出る方が絶対良いと思います。

30フィートから35フィートぐらいまではメインファーラーにする必要は無いのではと思いますが、でも
そうする事によって気軽にセーリングに出れるなら止めはしません。ただ、メインのパワーがかなり
ロスする事も知っておかなければなりません。或いは、メインのスライダーをカー付きのスムースな
スライダーにするだけでも違ってきます。ラトガーソンのスライダーは安くて効果があると思います。

或いは、体力的な理由もあれば、もうひとつの方法として、1個だけ電動ウィンチにするという手もあ
りますね。そうすれば、メインを上げるにも楽々ですし、また、他のシートを取りまわして、この電動
ウィンチを使う事もできます。

いろいろな方法がありますので、セーリングを基本として、楽にでは無く、気軽に出れる、出したくなる
事を優先して、艤装を考えたらいかがでしょうか。ちょっとした、こういう贅沢も、これでどんどん楽しめる
ようになるのであれば、価値は充分にあります。どんなに良い、性能の高いヨットであっても、乗らなきゃ
その良さを実感する事はできません。いろんな物がほしくなりますが、何を基本とするかで選択は違って
きます。そして、その選択は自分がヨットの何を楽しみたいと思っているかによって異なります。多くの
方々と同じで自分は満足かどうか、その辺を考えておかないと、自分も乗らないヨットを増やしかねませ
ん。ちょっと贅沢して、どんどん乗れるのと、節約して乗らないのではどちらが良いか。シンプルで最高
に楽しめれば、それが最も良いと思います。しかしながら、人は時間、体力、考え方、感じ方が違います
ので、自分にあった方法を考えださねば、人と同じでは楽しめない。

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