第百話 やっと10年目

独立してから、やっと10年目になります。お蔭様で、何とか長い不況も乗り越えてこれました。
多くの方々に支えていただいたおかげだと思います。どうぞ、これからも宜しく御願い致します。

マリーナに係留される多くのヨット、それも係留されっぱなし。そういう状況は決して良いわけで
はありません。オーナーがまずはヨットを楽しむ事が基本で、それがあってこそ新規参入者が
増え、我々も潤う。全体が活気づく事になります。全体が活気づけば、マリーナも増えるでしょう
全体的にいろんな開発がなされ、便利になり、全体的に良い事です。その為にはオーナーが
今楽しむ事だと思います。

その為に、ヨットをもっと知っていただきたいと思います。そして、もうひとつは、オーナーには気軽
さをもって頂きたいという事です。世界一周したり、アメリカズカップなどのすごい偉業が耳目を集め
ますが、そんな事より、我々一般人がいかにヨットを楽しむかという方が遥かに大切です。
ですから、遠くを見るのも良いですが、もっと足元を見ていただきたい。目の前の湾内で、充分
に遊べるという事を知っていただきたい。桟橋から一歩踏み出せば、陸から離れ、そこは別の
世界になる。

いろんな便利装備も良いですが、その前にセーリングを楽しむという基本的でありながら、最大
のヨットの醍醐味を味わう事を考えていただきたいと思います。セールさえあれば、桟橋から少し
離れただけで、わずか2,3時間で、しびれるようなセーリングを誰でも体感できるのです。セーリ
ングを楽しむのに、遠い、近いは全く関係が無いのです。海さえあれば、どこでも良いのです。
舵に当る水の流れを感じとり、風を感じ、セーリングがピタッと納まる時、何とも言えない感覚が
全身を覆い尽くす。それをみんさんに味わって頂きたいと思います。ヨットの大きさも関係無い、
自分の好きなヨットで、自由自在にセーリングを堪能する時、この時の為にヨットに乗るんだと思
います。全てはこの時の為にあると思います。

この時の為に、気に入ったデザインのヨットを、自分で磨き上げ、自分のヨットを知り、自分でヨット
を走らせる。こんな最高の遊びがあるだろうか。気軽にセーリングを楽しむ為に、ヨットのサイズを
自分で決める。自由自在に操る事、それがヨットが本当の自分の物となる事だと思います。
まさしく人馬一体ならず、人艇一体でしょうか。そうなると、自分でヨットを磨くだけでも楽しくなる。
ひとつトラブルを解消したり、故障したビルジポンプを交換したり、そういう事が楽しくなります。
ヨット全部を楽しむ事ができる。

ヨットは多くの仲間や家族達を乗せる事ができます。あの島に渡る事ができます。遠くにクルージ
ングに行く事ができます。キャビンで宴会もできるし、読書したり、お茶飲んだり、いろんな使い方
ができます。でも、その中心にいつでも近場で、自分一人でしびれるようなセーリングができると
いう事を据え置いてほしいと思います。これさえ忘れなければ、ヨットがあんなに放置されるように
はならないのではないかと思うのです。チークを磨きながら、あのセーリングの味が浮かんでくる
はずです。遠くに行かなくても、誰でも、その気になれば味わえる。ですから、シングルハンドの
デイセーリングが基本にあると思います。それに加えて、個人的な好みですが、クラシックな美しさ
は実に良いです。これはおまけですが、好きなヨットで、是非、自由自在にセーリングを堪能して頂
きたい。それが私の言いたい事の全てです。

       目次へ