第十九話 同質化

人は同じ質を求めます。同じである事によって安心します。でも、同じである事を求める
事によって、殆どは楽しむ事ができなくなります。同質化は他人の目を気にしますから、
いつも、他人の価値観によって自分を縛り付けている為です。楽しめないけど安心なの
です。個性の時代と言いながら、個性的に生きるのは難しい。ならば、遊びぐらい個性的
に遊んだらどうでしょうか。遊びは損得抜きの心の豊かさをもたらしてくれる行為ですから
他人に迷惑かけなければ、自分の思い通り遊んだら良い。自分の価値観で遊んだら、
最も楽しめると思うのです。

ある方ですが、ヨットでは無いのですが、フィッシングボート、それもカジキ釣りをする為に
フィッシャーマンを購入されました。彼自身は過去に数艇の買い換え経験があり、そこで
最後の艇として、検討された結果、フィッシング優先で考えられました。キャビンなんて、
殆ど使わない。そういう事でした。寝ても、みんなで雑魚寝できれば良い。それより、波
に強く、スピードがあり、安定性があり、そういうボートでした。キャビンはサイズにしては
小さめで、一般的では無いと思いましたが、あれから10年近く、彼は、買いかえるという
気持ちは全く無い。正解だったと言われます。こう書きますと、漁船のようなと思われる
かもしれませんが、とんでも無い。非常に美しいボートです。

人は同質化を好みますが、それでは本当に楽しむ事はできないと思います。ひとりひとり
価値観が異なります。ですから、自分の思いが最も重要なのです。でも、恐ろしいのは
知らない間に安心したいという気持ちが忍び込んできて、無意識のうちに同質化に流され
てしまうのです。大半の人がそうです。ですから大半の人は楽しんでいない。人と同じで
ある事は安心ではあるでしょうが、それ以上では無いと思います。

遊びですから、同質化を避けて、自分の好きにしたら良い。自分が求める物を最も満たして
これそうな物にしたら良い。そして、それを使う時も、人は人と思うようにしたら良い。どうせ
他人が言う事は、あんたも同質化しなさい、自分のグループに入りなさいという事です。
その人が楽しんでいるならまだしも、そうでないならどうします?さらに、その人が楽しくても
自分が同じように楽しめるかどうかは解らない。経験の無い方は解らないと思いますが、
周りを見れば、注意してみればそういう例がたくさんある。動いていないヨットが多いのに
驚くはずです。それでは楽しんでるとは思えないでしょう。もっと注意深く見ると、動いている
ヨットはセーリングを楽しんでいる人達です。

もっともっとセーリングに親しんで、日本発のセーリングを主体にしたヨット、スタイルができて
くれば良いと思いますね。そうなるとですね、日本で誰かが考案したような新しいアイデアが
出てくるでしょう。今はみんな海外からの輸入ばかりです。アイデアが出るというのは、そこに
親しんでいるからで、楽しむ事によってアイデアは生まれ、工夫する事も遊びです。

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