シングルハンドは一人で操船できる事であり、一人で乗らなきゃならないわけじゃ無い。一人で操船できるという事は誰を誘ってもセーリングを楽しめるという事であり、ゲストに操船を手伝ってもらうのでは無く、ゲストをサポートしながらゲストにセーリング操作を楽しんでもらう事もできる。ゲストだってただコクピットに座っているだけじゃあ最初は良いにしても、２回目、３回目ともなると座ってるだけでは物足りなくなる。

セーリング操作に参加すると面白さが断然違ってくる。ゲストだってオーナーがサポートしてくれるので安心です。舵を操作、シート操作、ウィンチ操作、これらは作業自体に難しい事は無いのでオーナーのサポートさえあればすぐにその場でセーリングを能動的に楽しむ事ができる。コクピットにただ座ってるだけとは全く次元が違います。

要はシングルハンドはゲストを楽しませる事ができる最高のスタイルなのです。ゲストを楽しませるのは飲み食いでも無ければおしゃべりでも無い。まして広々したキャビンでも無い。それらはヨット外でもできる事。ヨットはセーリングこそがヨットがヨットである所以なのですから。つまり、飲み食いもおしゃべりもキャビンも、セーリングを楽しんでこそプラスアルファ的に楽しめる。主役はセーリングです。

さて、もうひとつシングルハンドのメリットはそれこそ一人でふらりとヨットを出せる事です。いつもゲストを招待するわけじゃない。時には何も考えずにセーリングに浸る。ただ風に吹かれる。気分の転換、リフレッシュ、散歩、或いはセーリングの妙を味わう、集中してセーリングがしたい、いろいろ試したい、一人なら何でも自由自在です。その時の気分次第でどうにでもできる。

さてそんなシングルハンドセーリングに相応しいヨットはどれか？オーナーの技術によってはどんなヨットでもシングルを可能にする人は居るでしょう。私の知る限りでは４３フィート、４６フィート、ましてシングルハンド仕様でも無く、それでも自由自在にシングルでやってる人が居ます。でもそれらは例外で、シングル操作をし易いシングルハンド仕様のヨットというのがあります。その最たるものがデイセーラーというジャンルのヨットです。

このジャンルのヨットは近場の海域を主に設定し、よってキャビンにはあまり重きを置かずシンプルなキャビン、それに対してセーリングを堪能できる事を主眼に置いています。だからこそ船体のデザイン、排水量の軽量化、船体の強靭化、安定性、そしてもちろん操作性を重視しています。

デイセーラーはシンプルだし全長に対してスリムだしフリーボードは低くボリューム感が無い。それこそがシングルハンドを容易にしています。風圧面積は低く、重心も低い。ですから容易にシングル操作ができる。初心者でもすぐに慣れる。

ただ、そんなデイセーラー、安くはありません。何故ならセーリング性能、セーリング感覚を重視したヨットだからです。キャビン内装、装備等々なんかよりよっぽどコストがかかるのです。それらは装備のように目には見えないかもしれない。でも、船体のデザイン、軽量にもかかわらず強靭化を図る。こういう要素は非常に難しく、しかもバランスしていなければならない。剛性の高い船体はセーリングにおいて実に滑らかさを感じさせてくれます。その気持ちが実に良い。

なかなか初心者がこういうヨットを受け入れがたいかもしれません。キャビン重視に向かいますから。でも、デイセーラーは乗りやすさや操作性の点で言えば初心者向き、でも同時にセーリング性能から言えばベテラン向き、初心者が始めて簡単操作でセーリングを楽しみ、やがていろんな事が分かっていくうちに操作も上手くなって、いろんな艤装を操作できるようになっていきます。その時でもデイセーラーがもっと楽しくなるでしょう。

要はデイセーラーは簡単です。でも、もし求めるなら複雑にも繊細にもできる。オーナーの意図次第です。キャビンを簡素化した代わりにセーリングを求めた。それがデイセーラーです。

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