第三十八話 一時期でも集中して乗る 

   
   

自分のヨット歴の中でたとえ一時期であっても何度も何度も乗り続ける経験があると、その後のヨットライフ全体が違ってくるのではないかと思います。その後が時々しか乗らなくなったとしても既にヨットに対する姿勢が違ってきます。身も心も慣れています。気軽にヨットに接する事ができるようになります。これはヨットを動かすという事だけにとどまらず、ヨット泊も大いに寄与するのではないでしょうか。

ヨットライフというのは何も走らせる事ばかりでは無く、ヨットを様々な面で接触することが重要で、操船技術も重要ではありますが、ヨットで食事したり、泊まったり、ピクニックやセーリングといろんな遊び方をたくさんやって自分気持ちをヨットに近づけていく、慣れ親しむ事の方が重要ではないかと思います。

ある方、既に引退されましたが、まさしくそういう方で、しょっちゅうヨットに来てデイセーリングして、時に何かを工夫したり、雨の日は船内で新聞読んだりお茶したり、兎に角しょっちゅうヨットに接してありました。長い経験を持つ方でしたがセーリング技術については知らない事も多かったですが、でも、それなりのセーリングはして来られたし、九州一周も日本一周も経験されていました。でも、彼はヨットに装備されている艤装をすべて使いこなしていたわけではありません。敢えて言えば最小限の艤装しかあつかってこなかった。そういう意味では数十年の経験を持つ方でしたがセーリングに詳しかったわけではありません。しかし、恐らく、私の知る限り彼は長年に渡り最もヨットを楽しんだひとりだったと思います。

繰り返しますが、セーリング技術も大事な事ですが、それ以上にヨットを楽しむ技術と言いますか、それに長けた方でした。レースに出て勝つ事が目的なら兎も角、楽しい、面白い充実したヨットライフにしたいなら、この楽しむ技術、遊ぶ心、そういうのが最も大事な点ではなかろうかと思います。

それを養う為にも一時期でもしょっちゅう乗って、接して、心をヨットに近づけるというのが必要だろうな〜と思います。下手でも良い、楽しけりゃ良い、そのうち上手くなる。また、しょっちゅう乗れば気軽さも養う事ができる。これも大事。慣れてしまえばこっちのもの。自由自在になって、その後上手くなりたいと思えばセーリング技術も学んでいけば良いし、旅に行きたいと思えばそうするし、兎に角、何をするにも準備ができてくる。身も心もヨットと仲良くするのが最も大事な事かなと思います。その為には10年とか20年とかの長い時間よりも一時期にでも集中して乗る事ではないかと思います。


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