第二十五話 引き算的思考

   
   

世の中便利を追求していく事が当たり前という世界、我々は程度の差こそあれ、みんな便利中毒の患者です。その感性、思考をもって遊びの世界を見ますとやはり同じような行動を取ってしまいます。しかし、こと遊びにおいてはちょっと様相が違ってくる事もあるのではないかと思います。

何でも否定するつもりはありません。遊び方によっては便利な物があった方が良い事も確かだと思いますが、昨今ではそれが過ぎた事になっていないか?それが逆に足を引っ張っていないか?そんな事も状況によってはあるのかもしれません。以前のTALKで60フィートのデイセーラーをご紹介致しました。60フィートもあってキャビン無し、トイレもギャレーもバースも一切無し。これは極端な例ですが、何故オーナーはそんなヨットをわざわざカスタムで建造したのか?

ヨット文化が本当に浸透していくといろんなヨットが生まれます。いろんな考え方の人達がそれぞれ自分の本当の感性を求めていく文化がより強くなっていくと思います。だからフル装備があって逆に何にも無いヨットも生まれてくる。その中間もいろいろです。人は本来それぞれ違うわけですからいろんなヨットが進水して当たり前、という事はフル装備をみんなが求めてそれから逆に無いヨットも生まれてくるとヨット文化の浸透度が解る。どちらが良いかでは無く、いろいろあるのが良い。例えば、何でも完備のホテルも良いが、中にはテント張ってキャンプが良いという人達も少なからず居る。それが良いんだろうと思います。

それでヨットですが、ジブファーラーは必要か?これは必要だな〜。ドジャーは必要か?これは無い方が前方が見やすい。ビミニトップは必要か?無くても良いな〜。キャビンは必要か?これは欲しい、でも小さくても良い。ギャレーは必要か?無くても良いな〜。水はペットボトルでその日の分を持ち込めるしコンロだってポータブルで良い。冷蔵庫は必要か?アイスボックスでも良いし持ち運びできる小さ目のアイスボックスをコクピットに転がしておいても良い。それにバッテリーの心配なんかしたくない。トイレは必要か?デイセーリングなら無くても良いし、それなら個室トイレも要らない。エアコン?良い季節の時しかキャビンで泊まるなんてしない。こう考えると無くて良いものがたくさんあって、その分手入れも要らないからこれは便利だな〜。こういう考え方もあって良いと思います。

物事は考え方ひとつで変化します。便利はある固定した思考のもとで便利なのであって見方を変えればまた違ってくる。自分自身がどんな感性と思考をしているのか?フル装備思考でも良いし無い方向でも良いですが、無理する事無く正直に自分の思考に従うのが良い。そしてもし無くても良いと正直に思うようになった時、それまでより随分気軽にに遊べるようになるのではなかろうか?気軽さは最も大切な要素なんだろうと思います。実は私も便利病患者のひとりです。でも、面白さを削ぐような事だけはしたくないな〜と思います。その便利さが直接的か間接的にでも面白さを増幅させてくれるなら良い。


目次へ      次へ