第八十六話 TES 28のコンセプトと仕様


      

現在、TES28の艤装中ですが、このヨットのコンセプトはクルージングとシングルハンドを意識しているヨットだと思います。ご存知の通り、最近のヨットはボリュームが大きくなりました。かつて、いつかは30フィートなんて言っていましたが、今日では28フィートで十分なキャビンの広さがあります。かつての30フィートに十分匹敵するか、それ以上。

そして、このサイズですから、シングルハンドを考える方も多いかと思います。シングルで乗りこなせれば、いつでも自由です。実は、このヨットの造船所における標準仕様というのは、本当にベーシックで、そこからオーナーが自分のやり方を考えて、選択していく方式です。ですから、オプションリストには、膨大な装備があります。

例えば、エンジンは標準ではありません。それで、船外機仕様にもなるし、インボードエンジン、セールドライブと選択できます。キールもスウィングキールか固定キール、マストも簡単に倒せる起倒式とか固定式、舵操作はティラーかステアリングホィールか、その他、ギャレーはどうするか、トイレは等々、さらに、
電気関係、計器類等々です。これらは、造船所にとっては非常に面倒くさい事で、艇毎に仕様が大きく違ってきます。大量生産なら絶対、こんな事がはできないだろうと思いますが、各オーナーの仕様にできるだけ応える姿勢を取っています。これも、この造船所の売りなんだろうと思います。

それでいて細かい部分に配慮がなされており、例えば、コクピットロッカーにはエアーダンパー、エンジンのハッチにも同様にエアーダンパーが付いており、楽に開けられる、バタンと閉まる事も無い。また、エンジンルームにはLED照明、今時のUSBソケット、サロンのソファーがダブルバースにもなったりと、いろいろ考えられています。また、舵操作にステアリングホィールを選択すると、操作は油圧式で、これは狭いスペースで納まるので、アフトキャビンが非常に広く取れています。

バウやアフトバース、サロンのソファー下は、細かく仕切られており、各装備、タンクやポンプ等々がきちんと納まり、その他の区画には、荷物がきちんと整理して収納できます。それだけでは無く、万一清水が繋ぎ目から漏れても、それが全体に広がる事がありません。さらに、この仕切りは船底に積層されているので、船体剛性を高める役目にもなっています。



シングルを考えてのこのサイズ、メインシートは、コクピット中央にアイがあり、トラベラーは無し。クルージング艇ですから、かえってその方が良いと思います。そしてステアリングホィールのすぐ前で、舵を握ったまま、メインセールのシート操作ができる。これは今時のクルージング艇はキャビン天井の上に設置される事が多く、これでは手が届かない。また、計器の設置はピデスタルが大きいので、そこにいろいろ設置できます。

クルージング艇もセーリングを楽しんで頂きたいと思っています。しかし、コンセプトはクルージングなので、クルージング艇としての機能を発揮するのが一番重要で、そのうえで、時にはセーリングも楽しんで頂きたい。そういうクルージングヨットとして良く考えられたヨットだと思います。

今回の仕様は、固定キール、エンジンはヤンマー3YM20セールドライブ、固定オンデッキマスト、トランサムには大きな開閉式トランサムステップ、コクピットにはチークを張り、アンカリングもされるので、電動ウィンドラス(バウとピデスタルにリモコン)、海から上がった時の為にコクピットにシャワー、電動トイレ、12V/100V仕様冷蔵庫、陸電、チャージャー等々を設置しました。もちろん、オートパイロット(油圧)とGPSもです。 それらの写真は、また後程。


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