第七十九話 ヨットデザインにおける重要な要素


      


ヨットデザインには数多くの重要な要素がありますが、その中でも、注目したいのはふたつ。一つは、前話の安定性の事で、もうひとつは、何度も書いてきましたセール面積/排水量比です。ところが、一般的には、このふたつとも、殆ど取り上げられる事は無い様です。雑誌の取材記事なんかでも、データとして出てくる事がまず無い。どうしてなのか解りません。私としては重要なデータだと思うのですが?

この二つの要素は、特別なヨットにだけ重要な事なのでは無く、それどころか、如何なるタイプのヨットであれ、そのポテンシャルを見るのは役立つと思います。それがクルージング艇だろうがレーサーだろうが、そのデータによって明らかに解ります。ポテンシャルというのは、何もレーサーにだけにあるのでは無く、クルージング艇にも、全てのヨットにありますから、与えられたセール面積/排水量比を見るだけで、そのヨットがどんなスピードポテンシャルを施されたのかが解りますし、それが解れば、クルージング艇なのか、パフォーマンスクルーザーなのか、そんな事が解ります。

クルージング艇にとって、セーリングパフォーマンスがそれほど重要では無いと考えたとしても、どれ程のものかが解って、加えて、スタビリティーはどんなものかと考察すれば、クルージング艇であってもセーリングしますから、どんなもんかがある程度は想像できると思います。それをある程度理解したうえで、デザインが気に入れば間違い無いと思います。

にも拘わらず、相変わらず、バラスト比とか、ただ、速いとか言われても、それだけでは良く解らない。最近はバラスト重量さえ掲載してない事もあります。ただ、セーリングしなければ、これらは重要では無いとも言えます。キャビンばかりを強調しておけば良いという傾向があるのか? でも、それがどんなヨットであれ、セールがある限り、それはヨットですし、セーリングする事が前提にあると思います。

とは言いましても、そんな小難しい事を言わなくても、コンセプトが、例えば沿岸クルージング艇と言うのであれば、実際は、同じコンセプトであれば、みんな似た様なものですから、あまり気にする必要も無いかもしれません。でも、セーリング重視のヨットなら、気にした方が良いかなと思います。

ヨットは造りの良し悪しもある、船体形状デザインもあり、実に多くの要素が考慮されていますが、セーリングに関しては、上記ふたつが重要なのではないかと思っています。それ以外でしたら、デザインの美しさ、艤装とその配置、船内の装備、等々でしょうか? これらも重要である事には違いありませんが、昨今では、あまりにも、こういう艤装、装備等ばかりが強調され過ぎてきているように感じます。クルージング艇であっても、セーリングも楽しんで欲しいと思います。だったら、少し、そういう要素も考慮しておいた方が良いかな〜と思います。自分のヨットのポテンシャルを知っている事って、重要な事ではないでしょうか? とは言っても、実際にセーリングしていけば解ってきますが。



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