第五十七話 昨今の電気事情


      

写真はアルコナ465というヨットですが、最近は大型艇が目立ってくる様になりました。その要因はいろいろあるのでしょうが、ひとつには、大型艇でも昔に比べて、遥かに、楽に動かせる様になってきたのも、大型化の大きな要因のひとつかと思います。クルー不足を言われてきたものの、一方で、それを補う電動装置の発展で、近場のセーリングでも気軽に出せる様になりました。

電動装置は多岐に渡り、お馴染みの電動ウィンチ、電動ウィンドラス、キャプティブウィンチ、スラスター、ジブファーラーやメインファーラーの電動化、等々、いろいろありますが、これに連れてより大きな電気のパワーが必要になります。計器類なんかですとたいした事は無いのですが、これらの電動装置は、大量の電気を必要とし、しかも、設置位置がバウからスターンまでに分散しています。

その大量の電気をまかなうバッテリーですが、12Vですと、大きな電流を流す為には、より直径の大きなケーブルが必要となります。しかも、その装置からバッテリーまでの距離分の長さです。それも何本もありますから、問題は、それらが思った以上に、かなり重くなってしまうという事です。

そこで、こういう大型艇で、多くの電動装置を設置した場合、重量を軽減する為に、24Vバッテリーを使います。同じパワーを得るのに必要な電流量が少なくなり、従って、ケーブルを細くする事ができ、結果、軽量化になります。むしろ、セーリング重視のヨットは、せっかく軽量化を図って建造したわけですから、できれば重くしたくないですね。

昔は電動装置が今より少なかったので、こういう事は必要無かったかもしれませんが、今の事情は異なります。だいたい40フィートを越えていきますと、電動装置がより多く採用されていきますので、24Vを採用するのが良いと思います。 もちろん、船内装備は24Vを12Vに落として使う事もできます。

電気は便利、これを敢えて避ける必要なんか無いと思います。便利で、楽で、だからこそ、大型艇でも気軽に、近場でもセーリングを楽しめるようになりました。昔より断然楽になったわけですから、よりたくさん楽しめる。ただ、目的は、便利を味わいたいわけではありませんから、あくまで手段なので、より楽に、より多く楽しめるチャンスができたと考える方が良いかと思います。

下の写真はイーグル54,デイセーラーです。電動のお陰で、こんなサイズでも楽にセーリングを楽しめるようになりました。シングルも可能と造船所は言います。それもこれもパワーアシストのお陰、プッシュボタンセーリングです。特にセーリング重視の場合は24Vにしたいと思います。せっかく船体の軽量化に努めたわけですから。




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