第四十二話 デッキアレンジメント


      

自分の用途に合ったヨットのコンセプトを選択するのは当然必要な事ですが、その次に確認したいのは、デッキアレンジメントです。数多くのロープがデッキ上を走りますが、どのロープがどこを走って、どこにリードされ、その操作はどういう具合にするのか?

たくさんのロープも、しょっちゅう操作するのもあれば、滅多にしないというロープもあります。また、ウィンチを使うのもあれば、その必要が無かったり、留はストッパーだったり、カムクリートだったり、これらの事で操作の状態が想像できます。さらに、シングルハンド想定をするか、しないか?これに寄っても見方が変わってきます。

写真はTES28というクルージング艇です。造船所は特にシングルハンド仕様を強調しているわけではありませんが、でも、このサイズから考えて、シングルハンドもできれば、使い方の幅も広がります。そういう目でデッキアレンジメントを見ますと、最も使用頻度の高いメインシートが、ちょっと見にくいかもしれませんが、ステアリングホィールのすぐ前に設置してあります。この操作を考えますと、舵操作をしながら、ブロー等に瞬時に対応する事ができます。もちろん、ウィンチなんか使いません。

昨今のクルージング艇は、殆どがキャビンの入り口の左右どちらかにリードされ、しかもウィンチを使わなければなりません。と言う事は、クルーが居る場合は良いとしても、シングルだと対応に時間がかかる、場所を移動しなければならない、しかも、操作にも手間もかかります。その間、舵はいちいちオートパイロットに任せる事になります。それでも良いと言えば良いのでしょうが、できれば、クルージング艇と言えど、セーリングする時は、瞬時の対応なんかを楽しめると面白くなると思います。

また、ジブシートは左右のコクピットウィンチにリードされていて、ヘルムポジションから手が届きます。もちろん、メインセールの方が大きいですから、主に操作するのはメインシート、次にジブシートという事になると思います。その両方が手元にあると言う事は、シングルでも操作し易いです。この二つがどこにリードされているか、それをシングルで対応するか、或はクルー在りか、と考えていきますと、操作の手順が解ってきます。このヨットはシングルハンドを謳ってはいないが、やり易いと思います。

さて、その他のロープですが、使用頻度は落ちてきます。クルージング艇なら、尚そうだと思いますが、バックステーアジャスター以外は、前方、キャビン入口の左右どちらかに振り分けられています。と言う事は、シングルであれば、オートパイロットをかけて、前側に移動し、操作という事になりますが、使用頻度から言っても、そうしょっちゅうある事ではありません。もちろん、クルー在りなら全く移動する事もありませんが。ちなみに、このヨットのリーフはシングルラインリーフです。コクピットから1本のロープで、セールの前後両方を下げる事ができます。

このヨットはクルージング艇ですので、セーリングに強いこだわりがあるあけではありませんが、クルージング艇でもセーリングを楽しむ事があって良いわけで、そういう前提も考えておいた方が良いと思っています。ちなみに、この艇にはメインシートトラベラーは無く、コクピットフロアーにアイがあり、その一点留です。これには賛否両論でしょうが、クルージング艇というコンセプトから考えて、そこまでするのか? まあ、そこまでこだわらなくても良いのではないかと思っています。

クルージング艇であってもセーリングも考慮しておいた方が良いですし、その時の操作手順も考えます。使用頻度の多い少ない、操作するにヘルムポジションから移動しなければならないとか、そういう事を考慮しておくと良いと思います。また、それはパフォーマンスクルーザーなんかでも同じ事です。ですから、デッキアレンジメントを是非確認しておきたいと思います。

多くのクルージング艇は、広いコクピットを設け、そこを邪魔しない様にデッキアレンジメントがなされています。それでも、クルーが居る前提であれば問題はありません。でも、シングルだとできなくも無いが、ちょっとやりにくいかなと思います。


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