第十六話 今年一押しのヨット パート3


      

さて、一押しヨットの最後は前話のフライヤーよりもっとスポーティーで速いデイセーラーです。見るからに速そうなデザインですが、実際に速い。見た目を裏切りません。このヨットはフランス製、トフィノウ9.7です。昨年、デビューしたのですが、固定バウスプリットが標準になっています。

フライヤー33はノーラムセールを標準としていましたが、このヨットの場合はオプションにはなりますが、ラミネートセールが設定されています。もちろん、セール選択はオーナーの自由ですが、でも、やはり、このぐらいの帆走性能を持つヨットになると、ラミネートセールの方が本領を発揮できると思います。

排水量は2,300KG、セール面積は47u、ジブはセルフタッキングが標準です。これでSADRを計算しますと、27.4になります。前話のフライヤー33のセール面積とほぼ同じですが、排水量が500KG軽い。重量はスピードに大きく影響します。 このヨット、純レーサー程ではありませんが、キャビンをシンプルにしたレーサークルーザーのポテンシャルに匹敵します。そのパフォーマンスをシングルでできるというのがミソです。

造船所の設定としては、バウスプリットに非対称スピン、バウ先端にコードゼロ、その後ろにセルフタッキングジブ、そしてメインとなります。ウィンチは標準は2個で、ティラーのすぐ前のウィンチで、全ての操作を行います。レースに使用するのでは無い限り、バウスプリット先端に、以前ご紹介しましたフランスのセールメカー、Delta VoilesのコードDセールなんか良いのではと思います。最近では、UKセールからもコードDなるセールが出されています。レース以外すべてをクルージングと称するなら、デイセーラーなんかには、このコードDが最も使われるようになるのではなかろうかとう気がします。

さて、こういうヨットですから、標準の内装はバウバースと両サイドのシートですが、でも、オプションにはなりますが、清水や冷蔵庫なんかも設置する事はできますので、ウィークエンダーとして使う事もできます。

速いデイセーラーは他にもありますが、他と違う処は、このデザインです。マシン的なフィーリングでは無く、暖かさが感じられるし、センスの良さも感じます。チークデッキとコクピット回りのニス塗装のマホガニーが標準仕様になっています。このマホガニーはメインテナンスをし易くする為に取り外し式です。そうしてまで、このマホガニーを設置したかった。そのデザイナーの意図が感じられます。

ヨットにとって重要な要素は、見た目の美しさとセーリングパフォーマンスにおけるセールフィーリングだと思います。そしてそのパフォーマンスとフィーリングは素材、構造、造船所の技術によって総合的に創られると思います。また、それはクルージング艇においても同じだと思います。

このヨットの一押し理由は、セーリング性能の速さ、スポーツ度の高さと、それにも関わらず、このエレガントなデザイン、イタリアとも違う、フランス流のお洒落さという処です。バレリーナの如く踊り、フェラーリの様に走る。




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