第六話 感性を育てるという事


      

フランスの老舗造船所、ラティチュードから出たニューモデル、トフィノウ9.7というデイセーラーです。デザインとしてはモダン形状なのですが、その醸し出す雰囲気はヨーロッパの洗練された実にエレガントで、クラシック感さえ漂ってくる。最新の技術を駆使しながらも、機能的な面だけに陥らず、シンプルであり美しくもある。イタリアンともまた違うセンスの良さを感じます。

デザイナー曰く、”ネオクラシック”、新しいクラシックとでも言いましょうか、まさしく次世代のデザインだと言います。デイセーラーはスポーツカーと同じだと以前書きましたが、このヨットなんか見ると、まさしくそれと感じさせてくれます。

さて、排水量は2,300kg、バラストは900kg、バラスト比で言えば39%ですが、このヨットはデイセーラーの例外に漏れず、フリーボードが低いので重心が低い、さらにこのバルブキールと、デイセーラーには珍しく幅が2.99mもあるので、フォームスタビリティーも高いというのが特徴です。そして、いつものSADRを計算してみると、27 もあります。これは、微軽風にもスーっと気持良く走ってくれるはずです。ジブはもちろん、セルフタッキング、このヨットのデザインの意図が見えてきますね。 シングルハンド、高いスタビリティー、そして高い帆走性能、でも、見た目は柔らかく、エレガント、いわゆる、羊の皮をかぶった狼という処ですね。

お気づきだと思いますが、コクピットからマストまでの両サイドにピカピカにニス仕上げされたマホガニーがあります。シート類はこの下を通って、コクピットのウィンチにリードされています。お陰でデッキはスッキリ、この美しいマホガニー、メインテナンスをしやすくする為に、簡単に取り外す事ができるようになっています。でも、乗っていない時は、是非、コクピットカバーをかけておきたいですね。このヨットは美しくしておきたくなります。

それで、価格は? と言いますと、やはりと言いますか、このヨット、ちょっとお高い。フル装備だと、日本に持ってきて、納入価格は3000万ぐらいになります。まあ、これが高いかどうかはお任せしますが。間違いなく、レベルは高い。

新しいデザインですから、当然バウスプリットがついてきます。本物のチークデッキも標準仕様、当然ながら、ラミネートセールを設置して、ファーリングのコードゼロとか、B&GのGPSを含めた計器システム、さらに、このヨットはティラーですが、良くあるティラー用のオートパイロットでは無く、ラダーシャフトをコントロールするオートパイロットを設置し、その他、シンク、冷蔵庫云々と全部フルセットにすると3,000万ぐらいになります。でも、まあ、一生ものですね。逸品だと思います。

さて、このヨットのセールフィーリングはどんなものでしょうか? 間違い無く、上質の滑らかさを感じると思います。セールフィーリングはそのヨットの見た目に感じるフィーリングから、帆走性能の高さ、建造クオリティー、船体剛性の総合力です。間違いなくグッドフィーリングを得られるでしょう。それを何度も味わって、自分の感性を育てていきます。人生最高の贅沢ではないでしょうか? こんなヨットが贅沢なのでは無く、所詮は物質に過ぎないわけですが、そこから得られる味わいこそが、人生における最高の財産ではないでしょうか?それが3000万?ヨットの値段ではありません。感性の値段です。贅沢でしょう?




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