第八十二話 ビッグデイセーラー


      

デイセーラーが増えていきますと、中にはより大きなデイセーラーにしたいという方々が出てくるものです。それには恐らく二つの理由があって、クルージング艇程は要らないが、でも、もう少しキャビンが欲しいという場合と、ビッグボートにおけるセーリングのダイナミズムを味わいたいというものだろうと思います。

カスタム的なデイセーラーとしては、60フィートなんかも既に建造されていますが、プロダクション艇として建造されているのが、オランダのイーグル38、44、54です。サイズが大きくなりますと船体軽量化の効率が良くなって、帆走性能はますます上がりますし、そのサイズから来るセールフィーリングはまた格別の味わいがあります。

ただ、サイズが大きくなって、キャビンは広くはなりますが、それでもどちらかと言うとシンプルな造りとし、構造的強度以外において、見た目に凝った造り方はあまりしないですね。軽量化重視、セーリング性能重視なのです。でも、これは考えようです。何を最も重視していくか次第です。ここに凝ってきますと、その分重くもなります。でも、セーリングとのバランスですから、仮に凝った内装にしても、充分軽量化できてると見る事もできます。帆走性能は既に充分だと見る事もできます。

一般的には、30フィート前後のデイセーラーが最もモデル数が多く、つまり、最も求められるサイズだろうと思いますが、このコンセプトが広がれば広がる程に、多くのバリエーションが生まれていくのは当然だろうと思います。デイセーラーというコンセプトは、セーリングを軸に、高い帆走性能を楽に楽しめるヨット、そういうイメージが強くなってきました。もはやサイズでは無くなってきました。

ビッグサイズの特徴は多くがプッシュボタンセーリングになっています。これも特徴的ですね。何しろ、シングルを考える時、それも楽に、気軽にと考える時、やはり電動ウィンチなんかは欠かせない。メインセールのブームファーリング、デイセーラーはマストファーリングにはしないですね。性能重視ですから。それに、メインセールのトラベラーの左右コントロールもボタン操作で左右に動かせるというのもあるんです。それにスラスターなんかもあるし・・・

こういう事を考えたら、もはや大きいサイズだから何人もクルーが必要とか、そういう概念は無くなってしまい、近い将来、小さなマニュアルヨットより、でかい方が楽に走らせられるなんて考え方が一般化していくのかもしれません。自分の腕で操作して、その感触を味わうも良いし、パワーアシストで楽に操作するのも良いし、どちらにしても、セーリングの妙を失う事はありません。



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