第七十四話 セールパワーは何馬力?


      

セール面積とその時の風速で作られるセールパワーは何馬力あるのだろう?エンジンのパワーに変換する式があれば解りやすくなるんですが。そういうのが見当たらない。それで、セールエリアと走る角度と風速、その時のボートスピードはとなるとポーラーダイヤグラムというものがあります。

写真はアルコナ380 スウェーデンのパフォーマンスクルーザーです。 ハルスピード(新計算式)で計算すると10.04ノット、それに要するエンジンパワーは133HPと途方もない。こんなの設置できません。それで8ノットを目指すと、必要なエンジンパワーは34HP、まあロスを考えれば40HPぐらいあれば達成できるだろう。標準エンジンは30HPなので、このままで行くと、マックスは7.8ノットになるので、エンジンのパワーロスを考えても、巡行7ノットオーバーは楽に行けるでしょう。

それで、これをセールパワーで見る方法は無いか?と言う事でポーラーダイヤグラムを見ますと、メインと107%ジブで、見かけの風30度で上って、風速10ノットでボートスピードが7.2ノットぐらいを示しています。とすると、このスピードをエンジンで達成するには22.5HP、セールパワーは22.5HP相当という事になる。ところで、このヨットをプレーニングさせるには10ノットを超えないとプレーニングしないので、スピンを使って、アビームで、風速20ノットになると、10ノットを超えてくる。こうなるとエンジンの133HP相当という事になる。やっぱり風の力は凄いです。

因みにSADRは24.36です。DLRは160と軽い。排水量に対するセール面積(SADR)と水線長(DLR)、ハルスピード、ポーラーダイヤグラム、これらをつぶさに見ていくと、そのヨットのセーリングが解ってきます。後は、セールエリアに対するスタビリティーです。ところが、これの計算式が無い。幅や吃水キールのデザインによっても違うので、バラスト重量だけでは判断はつきませんが?

アルコナ380のバラストは2,400kg、幅は3.80m、吃水は2.10mが標準、セール面積はメイン+107%ジブで86.43uです。キールはL型キールで重量を最下部に集めています。これは各データを眺めて、他のヨットと比べて比較するしか無いかもしれません。因みに、正確にスタビリティーを表しているわけでは無いんですが、参考程度にバラスト重量/セール面積をしてみて、このヨットは27.8kg、つまり、1uのセー面積に対して27.8kgのバラスト重量です。それで経験上、これよりずっと吃水が浅く、幅も狭いヨットで計算してみると、30.5kgあり、これがなかなか安定性が高かった。それからすると、このヨットも結構安定性は高いのではと推測できます。

そしてもしセルフタッキングジブなんかにすると、SADRは23ぐらいになり、バラスト重量/セール面積は29.3kgとなる。これでも充分高いパフォーマンスですし、セーリング時の安定も高い。こういう手もある。

ボートスピードは2ノットを3ノットにあげる時のパワーと7ノットを8ノットにあげるパワーは、同じ1ノットの差ではありますが、ハイスピードになればなる程より大きくなパワーが必要になる。エンジンにしてもセールパワーにしてもです。ところが、ハルスピードを超えてプレーニングすると状況は変わりますね。実に面白い。

でも、実際乗り込んだ人間の体重、燃料、清水、その他、積み込んだ荷物の重量もありますから、その辺の重量も考慮しなければなりません。それらを想定して排水量を計算すると、もっと正確になりますね。まあ、レースでもしない限りそこまでは必要無いが、大雑把でも自分のヨットの性能を知る手助けにはなるのではないかと思います。こういうのを知っていくのも面白いと思いませんか?

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