第六十七話 デイセーラーのキャビン


      

デイセーラーだからってキャビンを全く無視するわけではありません。クルージング艇程広くは無くても、たまに使う程度でも、それなりに寛げるスペースがあった方が良いと、大抵のデイセーラーもそう考えています。一部にキャビン無しというデイセーラーもありますが、少数派です。

写真を見て、どう感じるでしょうか?デイセーラーのキャビンは、いわゆるワンルームで、個室がありません。デイセーリングとショートの旅と考えた時、こじんまりしたキャビンですが、充分かなと思います。そのお陰で軽量化にもなり、パフォーマンス向上にも一役かっています。長い旅で何泊もするわけじゃないし、4人は寝れる。小さなギャレーとトイレがあって、大層な料理をするわけでも無いし、殆どの時間はコクピットに居ます。個人的にはコーヒーが作れれば充分かな。このヨットの目的からして、キャビンはこれで充分だと感じます。キャビンに籠る時はどんな時でしょう?寝る時、雨の時?実際はそうは無いはずです。でも、やっぱり、落ち着いたキャビンが欲しいと思うのが人情です。



因みに、背もたれは後方にスライドさせて広く使う事ができます。寝転がるには充分。シンプルな内装ながら、暖かみがあるし、住むわけじゃ無い。トイレはどこに?実は、ギャレーの反対側の右舷にある棚の下に隠されています。よって、プライバシーカーテンが付きます。カーテンじゃ嫌だ?滅多に使わないし、緊急用だし、女性用、でも、カーテンが嫌ならキャビン入り口を閉じてしまいましょう。個室にこだわる方もおられますが、これでも充分、何しろアウトドアの遊びです。それにデイセーリング程度では、多分使う事は無いでしょう。

このヨットはフライヤー33、今年オーナーが亡くなって、建造の権利が新しい造船所に譲渡されました。下の写真は4人居ますが、もちろんシングルもOK、ユニークなのは、メインシートがコクピット左右のポケットにリードされており、下の写真の向こう側から二人目の黒い服着た人がシートを握っています。もちろん、ティラーを握ったまま操作が簡単に行える。バックステーはティラー根元近辺にリードされています。



写真のチークは実は人工チークですが、もちろん本物チークもOK(コクピットのチークは標準)で、デッキはオプションになります。スターンのオーバーハングが良い味わいのクラシック感を醸し出しています。こういうちょっとしたクラシック感も良いですね。バウ側は垂直に下りたモダンクラシックデザイン。全体の印象として、やはりヨーロッパ感がします。

ところで、このヨットもジブをセルフタッキングジブにしていません。もちろん、変更可能ですが、前にも書きましたが、ちょいとひと手間を遊ぶという考え方をする人達も増えています。セーリングはできるだけ何もしないで楽を考えるよりも、ちょいとひと手間をかける事で、より面白くなるという事もあると思います。もちろん、どちらでも考え方次第です。面白さは自分で創造する事が必要です。ジェネカーやコードゼロなんかも、自分の遊びの創造の一環です。どれをどう使わねばならないというよりも、自分のセーリング操作とのバランスを創造します。それが自分のスタイルです。自由で良いんだと思います。

大きな個室を二つ、三つというクルージング艇に対して、シンプルでワンルームというデイセーラー、使い方が全然違ってきます。キャビンをどう使うのか?に対して、デイセーラーはセーリングをどう楽しむのかという事になり、使い方が全然違いますから、比べてどっちという問題では無いと思います。キャンピングカーとスポーツカーを比べて悩む人は居ない。

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