第百話 フル装備の大型 VS.シンプルな小型


      

デイセーラーにはイーグル54なんてでかいのもありますが、全体的には30フィート前後から以下が最も多いです。特に最近では小型の種類が増えてきました。やはり気軽に遊べるからというのが大きな要因ではないかと思います。それに家族で楽しむにもウィークエンドクルージング程度(ヨット泊)が考慮されています。

たくさんの快適機器が装備される大きなボリュームのクルージング艇に対し、反比例するかのように、デイセーラーはシンプルを標榜し、気軽に高い帆走性能を楽しむというスタイルを強調しています。写真はバウスプリットを含めると8.5m、ハル長では7.8mです。SADRは23.7ありますので、これはかなり楽しめる。それに呼応する様に、セールはダクロンもあれば、ラミネートセールも用意されています。

キャビンには4人分のバースがセットされています。ギャレーだってフルサイズじゃ無くてもミニで充分こなせます。いろんな料理をする方は別ですが、ウィークエンドの気軽な家族の旅なら、キャンプ気分でもむしろ楽しめる。それが最近の欧米のヨット界の流れです。でっかいフル装備ヨットVS.小型のシンプルヨット。

デイセーラーを選択する理由は、気軽である事、帆走が面白い事、操作が簡単である事、シングルが容易である事、それともうひとつ、家族の遊びがヨットに囚われない事が上げられます。これは特に最近の傾向で、家族遊びはヨットもあるが、普通に旅行に行ったりもしたいわけです。でかいヨットがあると、どうもそれに気持ちが引っ張られてしまう傾向があるそうで、それはヨットが別荘の様な要素を兼ねているからかもしれないとの事です。

例えば、キャンピングカーを買うと、それで家族で旅を楽しめる。ホテルなんかも気にしないで良いから良いと考える。ところが、実際に所有してみると、旅行はキャンピングカーを使うのが前提になってしまいがちで、本当は、もっと遠くとか、気の利いたホテルや旅館でのおもてなしなんかも楽しみたいのに。でも、もし、4人家族が乗れるスポーツカーなら、旅の時に囚われないで良い。そしてスポーツカーは別次元のドライブを楽しめる。こんな感じでしょう。

また、デイセーラーの最近の傾向は、推進力にエレクトリックモーターの採用がだいたい殆どに採用されてきています。デイセーラーの航続距離としては充分なのでしょうが、バッテリーの充電を考えた場合、日本ではまだディーゼルエンジンの方が良いかなとは思います。帆走中のプロペラ回転によってバッテリーを充電するというのもありますが、どの程度できるのかはまだ解りません。もちろん、どこの造船所もディーゼルエンジンも可能で、セールドライブが主流になっています。

それともうひとつは人工チークの採用です。チークを張りますと、やはり見た目も良い感じ、豪華さもありますね。昔の人工チークは、こう言っては難ですが安っぽかった。それに紫外線による劣化で、年数が経過すると黒ずんでいました。それも、どんどん改良されてきている様です。、最近のは本物チークとそっくりらしい。さらに、軽量だし、紫外線にも強いし、メインテナンスも不要とか。恐らく、欧米の小型艇はこのエレクトリックモーターと人工チークが一般的になっていくのではないかという気がします。特にデイセーラーはです。

恐らく、欧米では、今後、フル装備の大型艇とシンプルな小型艇との二分化がもっと進むのではないかと思いますが、日本でもこの小型艇を再考した方が良いのではないかと思います。気軽にシングルでも楽しめるというのは、普段使いのヨットとしては良いんじゃないかと思います。まして、日本では別荘的な使い方はあまりしないのではと思いますし、皆が皆、遠くへ旅したいわけでは無い。

それともうひとつ、まだ顕著に表れてきているわけではありませんが、30フィート以下のクルージング艇で、これまでの艇ほどはボリュームをでかくしていない艇が出てきています。個人がプライベートで旅を楽しみたい時、今時の幅広で2ラットで、フル装備のギャレーで、大きなキャビンで、そういう処まで必要無いという現実的な旅を考える傾向も出て来た。つまり、旅もセーリングも大型艇 VS.小型艇という構図になってきているかと思います。

どっちが良いとは言えませんが、個人的には小型艇の気楽さと、デイセーラーのセーリング、旅を中心にするとしても、小型艇の方が日常的に楽しめる様に思います。だって、滅多に無いロングより、ちょこちょこ行けるショートの方が楽しめそうだから。それに普段使いとして、ピクニックやセーリングだって気軽に楽しめる。かと言って、大型を否定しているわけではありません。特に大型のデイセーラーなんか、実に気持の良い走りを味合わせてくれます。しかも、それがシングルで可能ですから、これはこれでかっこいい。実は内心では憧れてもいます。

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