第四十四話 小型ヨットも良いね


      

最近は大型艇が売れるようになってきたせいで、大手の造船所は小型艇を造らなくなってきました。でも、需要はあります。だから、小型艇専門の造船所もあります。長い間ヨーロッパの下請けをやってきた造船所が独自ブランドを立ち上げて小型艇を建造し成功を収めています。と言っても量産では無く、小規模です。

小規模造船所のメリットは職人が手間をかけている事です。量産する為にたくさんの部位をモールド成型して組み立てる方式では無く、職人の手間がかけられています。バルクヘッドや内装家具、床下のストリンガー等々がちゃんと船体に積層されています。パテ接着では無いのです。こんな事を欧米でやりますと人件費の問題で高価になりますし、量産向きではありません。ポーランドはまだ人件費が安いせいでしょう、高価にならずに、高い品質を実現しています。しかも、ノウハウには長い蓄積があります。

今回のポーランドから輸入したTES28を見てみますと、仕事が実に丁寧になされた事が解ります。しかも、様々な部位に細かい配慮がなされている。確かに、艤装品にブランド物のハーケンなんかは使っていません。でも、前述しました様に、バース下は区画を区切って、収納がし易いし、その仕切りがちゃんと船体に積層されています。こんな事は当たり前では無いんです。ロッカーにはガススプリングが付いてるし、エンジンのハッチしかり、ちゃんとエンジンルームには照明が付いてます。

こちらで風向風速計を設置しているのですが、何と、マスト根元から電源パネルまで使うかもしれない配線が入っていました。同軸ケーブルとか、その他数本が既に入れてありました。また、キールを外して輸送したのですが、キール設置の為の材料も入れてあった。こういう配慮が嬉しいですね。こんなのは小規模造船所だからこそではないかと思います。後々の事がちゃんと考えられている。



ヨットは何十年も使われていく乗り物ですから、何十年でも耐えられる物でなければならないし、その間のメインテナンスもし易いものではなければなりません。そういう配慮が成されているかどうかも重要だと思います。

クルージング艇は多少重くても頑丈な船体で、広いコクピットとキャビン、それに28フィートだったらシングルも考慮しますから、ジブシートウィンチの位置とメインシートの位置も重要な要素かと思います。メインシートのトラベラーは要らないでしょう。それもラットのすぐ前が良い。




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