第二十二話 パワーとセール


      
  

ヨットには特有の楽しみ方があって、それはセールフィーリングと情緒的な味わいにあると思います。それを求めない限りはヨットである必要性が薄れてきます。セールで走る知的な面白さやエンジン音がしないという静けさは風や波の自然な音に包まれます。そんな情緒的な味わいはヨットならではだと思います。

キャビンの広さや快適さを求めるなら、ボートの方が優勢でしょう。また、旅を求めるのもボートの方が合理的でもある。だから、ボートの方が圧倒的に増えており、ヨットは減少傾向にある。特に、沿岸のクルージングならボートの方が便利です。しかも、ボートは様々な開発によって目覚ましい進化を遂げてきました。それが今日の傾向の大きな要因だろうと思います。

もちろん、ヨットにしてもこの進化は凄まじいです。しかしながら、セーリングだけは機械任せにする事はできません。例え、電動を使うにしても、どの程度調整するかは人であり、それが面白さですから。しかし、人々が便利と快適さを求める強い傾向があり、それは、必然的にボートを支持する事になってきたのかもしれません。

しかし、この事は逆にセーリングこそがヨットの核である事を新めて想わせてくれます。この知的刺激、セールフィーリング、また、情緒的感覚はヨットでなければならない。セーリングは、いかなるボートでもあり得ない要素ですから。また、旅と言ってもヨットでなければならない情緒的こだわり等があるなら、ヨットでなければなりませんが、それが無い限り、効率と便利を求める限り、ボートに軍配が上がります。

つまり、一般的には、プレジャーボートの主流はパワーボートであり、それが顕著に出てきて、特別な想いを持つ方々がヨットを求め、それがより明確になりつつあります。今後、ヨットはセールを使ってこそ楽しめるもの、それがより強くなっていくのではないでしょうか?セールを使わ無いなら、ボートと変わらないし、それなら、むしろボートの方が効率は良いとなるのでは無いでしょうか?今日のパワーボートはそういう事を思わせてくれました。ヨットはセ―リングして楽しみ、知的に情緒的に、より充実させて、その味わいを愛でる。ボートは効率と便利と快適性を求める。求めるものは全然違うと思います。



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