第八十二話 買収


      

実は、アレリオンの造船所のオーナーが変わりました。これまではグループ内ではトゥルーノースやノースリップというボートや、C&Cというレーサーも建造していましたが、今回はアレリオンブランドだけが単独で新しいオーナーを迎える事になった次第です。

こういう事は海外では良くあります。会社ごと売って引退したり。実は、イタリアのディナミカというデイセーラーの造船所も、オーナーの高齢化によって、会社を売却する計画がある様です。息子は後を継ぐつもりは無いとか。小規模の造船所ではファミリー企業が多く、代々、家族で受け継いできていますが、後継ぎが居なかったりすると他に売却されます。米国のモーリスヨットもヒンクリーの傘下に入りましたし、スワンだってフェラガモに買収された。有名ブランドは魅力的なんでしょうね?ヨットを建造するという魅力に、たくさんの投資家が集まります。

これらの投資家は、他にも事業を持っており、だいたい造船所を経営して儲かるという視点よりも、高いブランドのヨットを建造して世に送り出すという誇りと言いますか、ある種のステータスと言いますか、そんな視点がある様に思えます。ある造船所のオーナー曰く、儲かる事を第一目的とするなら、数多く建造する事だ。我々はより良いものを建造したいんだ。と言われた事を思い出します。

スワンはフェラガモにオーナーが変わってから、デザインが少し変わって来た様に思いますし、サイズもでかいものばかりになってきました。アレリオンがこれからどう変わるのか?と言っても、今の処、これと言って変化は無い様です。アレリオンブランドはデイセーラーというブランドですから、そこは変わる事は無いでしょう。

ところで、アレリオン最大艇であるアレリオン41はデイセーラーか?とあるアメリカの雑誌に書かれていました。デイセーラーの様で、クルージング艇の様でもある。結論は読者に任せるが、デイセーラーにしては凝った内装です。クルージング艇にしては、今時のクルージング艇程広いわけじゃない。アレリオン41は、オーナーが変わる前から建造されていたヨットですが、サイズが大きくなっていくと、クルージング的要素が加わったり、或いは、より高いパフォーマンスを求めたり、造船所によって方針が違って来ます。

アレリオン41はSADRは23.7ありますから、一般的には十分なパフォーマンスだと思います。レベル的にはレーサークルーザーレベルです。それをシングルハンドで乗れる様にして、セルフタッキングジブにして、デイセーラーとしてのジャンルをキープ。但し、内装に高級感を出し、クルージング性も高まった。今後、もっとでかいサイズが出て来る可能性もあるでしょうね。50フィートクラスとか。

恐らく、アメリカの造船所では、デイセーラーをヨーロッパ系の様に、超ハイパフォーマンスにする気は無い様です。これで充分なパフォーマンスですし、よって、大きなサイズになるとデイセーラーでありながら、クルージング性も付加していく。一方、ヨーロッパ系造船所では、サイズが大きくなると、より高いパフォーマンスを求める事が多く、内装も凝ったものでは無く、シンプルにして軽量化を維持している。同じデイセーラージャンルでも、アメリカとヨーロッパでは考え方が違います。

上の写真はアレリオン41のバウバースです。デイセーラーにこんな内装が必要だろうか?シンプル化してパフォーマンスをもっと上げた方が良いのか?或いは、既に十分なパフォーマンスだからその必要は無いのか?それはユーザーが選択する事ですが、今回のオーナーの交代によって、今後、どの様な展開を見せるか、興味深々です。

次へ       目次へ