第七十九話 ONとOFF


      

仕事はONで、それ以外はOFFだと思っていませんか? ヨットはレジャーで、それはOFFだと思っていません? 息抜きにやるもんだと。楽しくやれば良いと。それではヨットの面白さが解りません。ONは気持が入っています。OFFはそれが無い時です。

いろんな種類のONがあります。仕事はONですが、その他、映画を見たり、本読んだり、温泉に行ったり、これらもONで無ければ、心から味わう事ができません。いつもONだと疲れます? いいえ、ONの種類が違うから、それぞれが、それぞれのONをより活性化させると思います。例えば、温泉に行って、湯船に浸かる時、思わず、あ〜とかう〜とか声が出たりします。心がそこに無いと、そんな事はありません。つまり、仕事だろうが、遊びだろうが、今やってる事に、心が共にある事が重要です。

だから、当然、セーリングはONでやります。ピクニックもONでやります。ただ、ピクニックには、その場の楽しさはありますが、長期に渡る進化というものがありません。もし、毎回工夫して、より楽しいピクニックをと思うなら別ですが、普通は無い。それで、セーリングをONでやって、長期に渡る進化を楽しみ、その時々のピクニックもONで楽しむ。それぞれをONでやるからこそ、気分がその都度変わります。それがリフレッシュであり、互いのONにも効果的に働く。

最大の敵は怠け心と退屈感です。何かをしようとは思うのですが、行動にならない。行動しても期待した事とは程遠い。これがあるうちは、何をしても満足はできません。まずは、どうにかして、意思の力でもって、今している事に心を置く必要があります。どうしても無理な時は、さっさとやめて、別な事に切り替える。そのままだらだらしていると、つまらない印象だけしか残りませんから。

ONとOFF、自分の気持ちを常に意識しておいた方が良いのではないでしょうか? セーリング中に吹かなくて退屈感を感じて来たら、コードゼロとかジェネカーを上げてみるのも手ですし、或いは、諦めて、漂う感じを味わってみようと思えたら、気持が切り替わってONにする事ができます。漂うのも気持ちがそこにあればONです。それも無理なら帰りましょう。

つまり、自分の工夫次第です。だから、退屈感は風のせいでは無く、自分のせいです。セーリングが面白く無いのでは無く、自分自身が面白く無いんです。それを防ぐ為には、知識とか感覚とかが役に立ちます。それらがあれば、吹かない時だって、繊細なセーリングを楽しむ事ができるかもしれません。これをONで楽しめれば、意外に面白かったりします。

何もせずに、ゴロゴロしているのはOFFかもしれません。でも、今日はそうしようと決めて、ゆっくり体を休める日だと思うなら、それはONになる。しょっちゅうやるONとたま〜で良いONと、いろいろあって、それを使い分けて行く。

以前、ロングキールの重いヨットでセーリングしていた時、風が落ちて走らなくなりました。でも、そのヨットにはジェネカーがあったので、面倒くさがらずに、展開してみると、遅いなりにもスーっと走り出しました。絶対スピード値としては遅いものの、この時の気分は上々、いいね!って感じでした。これは疑いも無くONです。

ONは何をしていようが、、心が行為とともにある事。そうしたら退屈感は無い。ところが、些細な事、小さな事、微妙な事、つまらないと思う事には心がそこに居られなくなる。供にさえあれば、そこから何かを感じ取って、次の展開も出て来るが、それができなくなる。吹かない時は退屈になって、次の機会に期待する。しかし、都合良く、次が吹くとは限らない。そうこうしているうちに、全体がつまらなく思う。という事は、逆に、吹かない時にもONに出来れば、セーリング全体を楽しむ事ができるのではないでしょうか?だから、吹く時は吹く様に、吹かない時は吹かない様にセーリングを楽しめるようになれるかどうか?セーリングで最も難しいのは、知識や技術では無く、繊細さにONで対応できるかどうかかもしれません。

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