第四十話 贅沢の本質


      
アレリオン 30

ビデオはアレリオンの最新モデル、カーボンマストで、バックステーを排して、メインセールは大きなローチを持たせ、セール面積を広げている。2900kgの排水量は、今時のデイセーラーとしては軽い方では無いが、1200kgのバラスト重量は安定感があるし、SADRは21.5で、結構なスイスイ感がある。

バラスト重量をもう少し下げれば、SADR値はもっと上がるが、それだと安定感が下がる。このバランスは微妙な処だが、強風と微軽風を考えれば、特にシングル想定も考えれば、良いバランスです。微軽風にはジェネカーやコードゼロの想定をして、カーボン製のバウスピスプリットが設定されいるからです。

ラット仕様とティラー仕様のふたつがあって、どっちが良いかは、各人のスタイルに寄る。デザインはもちろん、アメリカントラディショナル。こういうデザインは、クラシック系だが、ヘビーな感じがしなくて、それでいて落ち着いたデザイン。良いね!

考えてみれば、デイセーラーというヨットは最高の贅沢なのかもしれない。目には見えねど、強靭な船体を造り、さらに軽量化を図る。セーリングに対して求めるのはフィーリングなのです。装備として、あれがあるとか、これがあるとか、そういう目に見える物でアピールするのでは無く、見えない処に贅を尽くす。解る人には解るという姿勢か?スピードだけを求めるのは簡単だ。広さを求めるなら簡単だ。しかし、フィーリングは別の次元になる。人が究極的に求めるのはフィーリングだと思います。

デイセーラーは、スピード感、安定感、操作感、セーリングにおける滑らか感、加速感、波と当たる衝撃感、レスポンスの感じ、等々、それらを問う。何と贅沢なと思います。何故なら、それらは形としてあれば良いわけでは無く、その上の質を問うからです。そして、そのフィーリングは部分から生み出されるのでは無く、全体の総合的質から創りだされます。

遊びが贅沢とは誰も思わないが、ヨットは贅沢だ。高価だから。そうなると、でかいのは贅沢だになり、たくさんの装備は贅沢だとなる。しかし、そのまた上を行く贅沢は、限られた時間の質では無かろうか?その時間の質とフィーリングは不可分の関係にある。プライベートジェットが贅沢なのでは無い。贅沢なのは、その移動時間の節約によって、別の時間を持てる。その時間の質が高ければ、それが贅沢だ。

現代は、進化によって、時間をどんどん短縮する事が出来て来た。それが進化の恩恵だ。しかし、その短縮によって新たに出来た時間に、同じ価値観で行動するからストレスが溜まる。そうでは無く、その時間に少しでも、時間の質と感覚を重視する行動を取るなら、また違った人生になるのではなかろうか?

発達した文明によって得られる最高の贅沢は、時間の質と感覚を、自分で選択できる事では無かろうか?決して、大きさやスピードや便利では無い、これらは手段にはなるが。本当の贅沢はプライスレスなのです。

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