第三十二話 セーリングのパワーバランス


      

つい先日の事、不覚にも車の横を、脇に立ってた低いポールに擦って、傷をつけてしまいました。それで、修理に出して、車を借りたのですが、これがもうパワー不足、実用性に問題は無いんだろうけど、楽しくない。気持ち良くない。場合に寄ってはイライラします。

気持ちとはそういうもんで、実用性を満たせば良いってもんじゃなくて、実用性をどれだけ超えているか?重量に対するエンジンのパワー不足、言い方を変えれば、パワーに対して車体が重すぎる。おまけに車体の剛性やら、足回りやら、そうなると、ステアリングにまで不足感を感じてくる。まあ、借り物だから仕方無いんですが。別に車好きというわけでは無く、普通のドライバーです。

ヨットでも同じ事が言えます。排水量に対してのパワー(セール)不足は重さを感じ、船体ががっちり造られていないと、剛性の低さに気持ちは良くない。実用性、もっとも、ヨットに実用性は無いが、それだけにフィーリングは重要ですから、それがどうもいただけない。

セーリングはフィーリングです。何故なら、実用性は無いから。だとするなら、船体剛性をしっかり造って、そのうえで、排水量とセールのバランス、セールとバラストとのバランスが、どう取ってあるか? そこに良い悪いは無く、その配分がセーリングとなって現れますから、どういうセーリングなのかを見る事になります。自分のセーリングと対比させる事になります。

ヨットが車と違う処は、風(燃料)をコントロールできない処です。パワー(セール)不足だとしても、燃料(風)が大量に注がれればパワーが大きくなり、重い船体でも良く走る。逆に微軽風だと、完全パワー不足。でも、どうにもならない。

そこを何とかしたい。この中でひとつだけコントロールできるものがあります。セールです。セールは形を変え、パワー(風)を逃がす事も出来れば、リーフして、パワーを落とす事もできる。さらに、ジェネカーなんかでパワーを追加する事もできる。しかし、排水量とバラスト重量は変えられないので、そこをどうバランスさせるか?


これはどういうセーリングを目指すかに寄ります。船体剛性を高く維持しながら、重量を落として行く。どこまで落とすか?軽ければ良いとは限らない。これは、目指すセーリング次第となります。この事に寄って、セーリングを重視したデイセーラーには、様々なセーリングが生まれてくる事になります。この事を次回に少し書きたいと思います。

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