第二十三話 美意識


      

写真の二艇はオランダのデイセーラー、イーグル44.この長さで、キャビンはバウにひとつ。前側にベッドがあり、その手前にちょっとしたソファーが両サイドにある。他にキャビンはありません。それで、メインサロンは?と言うと、コクピットの前方側に大きなマホガニー製のテーブルが設置され、その中には、シンクと冷蔵庫が備えられている。まさしく、ここは寛ぎのメインサロン、そして、コクピットの後部側にはマホガニー製のステアリングと操作系が両サイドに設置されている。

長い前後のオーバーハングは、このヨットの美しさ。後部側のデッキ下には、メインシート用のキャプスタンウィンチが内蔵され、シートを引くのも、出すのもボタンひとつ。そうなると他のウィンチも当然、電動式です。さらに、操作パネルも左右に配され、どちらからでも操作ができるという配慮もある。

舵効きも良いし、デッキも低く抑えられ、風圧面積も小さく、出すのもシングルで思った以上に簡単だ。外に出たら、早速メインを上げ、ジブシートをウィンチにリードしてファーリングを開く。一連の作業は全てボタン操作で済む。この上部のクラシックデザインにも拘わらず、キールはT型のバルブキール。どうりで舵効きが良いはずだ。

水面をなめる様に走る。デッキが低いので海面が近い。そのせいで、海面の後部に流れて行く水の流れが、より走りを強調して感じられる。タック、セルフタッキングでは無いが、実に楽にできる。時折、電動ウィンチじゃなくて、ウィンチハンドルを回したくなる。舵とのタイミングを遊ぶ時は、その方が楽しめる。繊細さを楽しみ、さらに、荒れた時でも、スプレーがコクピットにまで飛んでくる事は無いし、コクピットは常にドライだ。

このヨットをどんな風に乗りこなすかは自由だが、ただ、美しく走らせたい。それこそ自由自在に、もちろん、シングルで乗りこなす。他に、何が要るだろう。美意識は、色や形、質、さらに、走り方にまで及ぶ。面白さの神髄は、自己の美意識の追求にあると思います。

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