第十二話 セーリングをどうする?


      

デイセーラーというジャンル程、そのパフォーマンスの幅が広いヨットは他には無い。クルージング艇からレーサーのセーリングポテンシャル迄、全てをカバーしている。何故って? 

極端かもしれないが、考え方のひとつの例をご紹介します。上の写真は32フィートだが、キャビンが一切無い。さらにハイテクだから排水量はとても軽い。そこにどんなセールプランを持ってくるか? このサイズで排水量はわずか1,281kg、因みに、普通のクルージング艇なら5〜6t は行く。そこ迄軽量化を図りながら、セール面積はメインとジブの合計で、わずか26.5uしか無い。これは同程度のクルージング艇のメインセール1枚分かそれ以下だ。だったら、操船は楽だろうという事は容易に想像ができる。それにも拘わらず、このヨットのパフォーマンスはクルージング艇を遥かに凌ぐ。排水量というのはそれだけ影響が大きい。

もし、もう少し大きなセール設定をしたら、ポテンシャルはもっと上がる。が、デザイナーはそうはしなかった。このままでもSADRは22.8もあるし、これで充分セーリングをスポーツとして、しかも、楽に楽しめる。セーリングを楽しむに、スピードオンリーでは無く、こういう考え方もできる。セーリングはもっと多角的に考えるべきだろうと思います。

ある人は気軽にシングルでセーリングを楽しむだろうし、また、ある人はレースを楽しむ。そして、どちらも、家族や友人達とピクニック的なセーリングも楽しみ、また、旅を加える人も居る。しかし、主役はデッキの下では無く、デッキの上なのです。それがデイセーラーたる所以です。そして、どんなセーリングを求めるかはそれぞれの考え方次第です。

”風があなたのマスターだとしたら、それはデイセーラーを選択するべきだ。” という言葉がある。微軽風から強風まで、上りがあって下りもあって、その組み合わせは無限にある。それをマスターである風から学んで、自由自在フィーリングを獲得する。どんなパフォーマンスのヨットで、どんな自由自在感を得るか?これぞセーリングの醍醐味ではなかろうか?自由自在を感じ始めると気持良くなってくる。

ヨットのデータを見る時、デザイナーが何を意図しているのかを想像します。そこからどんなセーリングが期待できるか?自分がどんな風に自由自在感を得て行きたいか?デイセーラーのパフォーマンスの幅広さは、我々のセーリングに対する価値観がそれぞれ違い、幅広いからです。

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